第10章 ゴミ捨て場の決戦!
「フッ飛ばされんのはまだ手が上なんじゃない?
手は前っつったでしょ、ノブカツ君」
試合中、相変わらず黒尾さんが定期的に煽ってくる
黒尾さんと言い、木兎さんと言い…あと実の兄もだけど
厄介な兄貴肌の人に絡まれる確率が高いのは気のせいだろうか
いつだったか出会ったばかりの頃、歩にも弟気質とか言われた気がするな…
そんなことを考えてフッと笑みが溢れる
再びローテーションが回りコートに戻ろうとすると、菅原さんに
「行けっ月島っ!黒尾に負けんなっ!」
いつになく熱い様子で声をかけられる
「無理ですよ
僕、格上の誰かに勝とうと思ったことなんかないです」
言いながらネット際に進む
「黒尾さんに勝とうなんてまさか!そんな!」
背後に山口がピンサーで立つのが分かる
「僕一人で勝とうなんて1ミリも思ってません」
山口の闘気がビリビリと伝わってくる
それは相対している音駒にも伝わっていて
「彼は一人でも勝つ気じゃないかい」
黒尾さんが言う
「…そうですね
あいつは僕の先を行く男なんで」
そう答えると同時にピーッと笛が鳴り、山口のサーブが放たれる
ふわふわと軌道の読めないボールは音駒コートに入り、山本さんの腕を掠めてコート外に落ちる
だんっ
「んっ!いよっっっっっし!!」
山口がガッツポーズをした
『烏野に本日一本目のサービスエーーーース!!』
僕の一歩前を行く男とは思ってたけど…
本当にここで決めるんだから
大した男だよ
「ハハハ」
思わず笑いが溢れる
タイムアウトを挟んで、2度目の山口のサーブ
音駒に二度目はない
海さんがオーバーで捕まえて、孤爪さんにボールが返る
…十分
この人…ほんとモーション少なくて読みづらいけど
冷静に孤爪さんの上げる方向をしっかり見てから跳ぶ
ドドドッ
『ーこぉこでブロックー!!!正に流れを作る一本ーーー!!』
僕一人で勝てるなんて思ってない
…僕一人ならね