第9章 春高!
「別に影山に言ってないし…」
僕は影山に背を向けて歩き出す
「でも…
俺は橘さんに、気持ち伝えたからな」
影山が僕の背中に向かって言う
「!」
振り向くと影山はニヤリと笑った
「俺は…日本代表に必ずなる」
「そんなこと…今更僕に言わなくても、君ならそう…
「そんでその時はお前から橘さんを奪いに行く」
僕の言葉を遮るように、挑発的に言う影山
「…は?出来るもんならやってみなよ」
そう言って踵を返した
歩と影山は付き合ってなかった
でも影山は歩のことが好きで、気持ちを伝えた…
焦る気持ちもあるけれど、僕は僕なりに歩の気持ちを信じて、宮城に帰ったら真っ先に伝えよう
そしてその場で返事を聞く
もう迷わない
「影山に背中を押されるなんて…」
苦笑いしながら、僕は自分の部屋の扉に手をかけた
中に入ると珍しく日向は起きていて、山口はすっかり夢の中
「おう月島、どっか行ってたのか?」
「…うん、自販機…そっちこそ珍しく起きてんの?」
「おう!なんかもうワクワクしてさ!今すぐ試合したい!」
「やめてあげなよ、対戦相手寝静まってるデショ」
「…特に研磨な、ぜってぇ寝てそう!あ、逆にゲーム機持ち込んでっかも!」
明日、ついに音駒と激突する
日向と孤爪さんは何か不思議な絆のようなものがあって、きっと孤爪さんと公式試合で戦うというのは日向にとって、僕たち以上に意味のあることなんだろう
「そーいやさ、月島…お前のブロックってやっぱ凄かったんだな」
「は?いきなり何?気持ち悪いんだけど」
「お前一日に何回も気持ち悪い言い過ぎだぞ!なんかさ、俺今まで殺人サーブ!とかドシャット!とか派手なプレーがカッコいいって思ってたんだけど」
「…思ってそうだよね」
「イチイチ嫌味言うな!でもなんかお前のリードブロックってさ…確実にワンチ取ってプレッシャー与えたり、コース絞って打たせてフロアディフェンスで捕まえたり…6人で勝つためのブロックなんだなって改めて実感した」
「そりゃどーも、てか君こそさ…
やっぱ何でもない」
言いかけてやめた
あの終盤の高く上げたレシーブのこと
「言えよ!何だよ気になるだろ!」
喚く日向をよそに、ヘッドフォンを装着して布団に入った