第9章 春高!
「試合のコーフン収まらん!すぐにでも試合したい!」
と言う日向に月島が
「…きもちわるっ…」
と呟く
「月島それイヤミじゃなく本気のやつだろ!傷ついたぞ!」
言いながら日向が湯舟から飛び上がる
それを追い払うようにシャワーで応戦する月島
知らんふりして髪を洗っていると
「…おい」
日向を撃退した月島が話しかけてくる
「んだよ」
「…チョット話があるんだけど」
何の話だ?
試合のことか
それとも橘さんのことか
風呂から上がると、さっき橘さんと話してた自販機のあるスペースに戻る
もちろん彼女はもうそこにはいないけど
先に上がっていた月島がポケットに両手を突っ込んで壁にもたれたまま、目線だけ俺の方を向く
「山口は?」
「もう寝た、ってか湯舟の中からだいぶ危なかったけど」
「確かに…で、話って何だ?」
「ああ、じゃあ単刀直入に聞くよ
影山…歩と付き合ってんの?」
?
は?
何言ってんだコイツ
「何でそーなる」
「違うの?」
「ちげーよ」
「…そ」
月島は何故か少しホッとしたような顔になる
「何でそんなこと訊くんだよ」
「ココに来る前日さ、体育館での2人の会話聞いてたんだよね
よく聞こえなかったけど歩が君に告白してるような口ぶりだったから…」
そうか、あの時コイツはあの場にいたのか
「説明が面倒くせぇから言い訳はしねぇけど、まぁお前の勘違いだ」
「…ならいいや」
そう言って俺の隣を通り過ぎる月島
「さっき…宮さんと話した後の橘さんとここで会った」
俺がそう言うと、月島は足を止めて振り返る
「え?」
「橘さん、自分が好きな気持ちを宮さんに信じて貰えなかったことに傷ついたって言ってたぞ」
「…」
「お前は信じてやれよ」
「…そんなこと影山に言われなくても…」
「分かってねぇだろ、現にお前は彼女の気持ちを疑って俺と付き合ってるって勘違いしてたんだからな」
いつも冷静で人を小馬鹿にしたような態度の月島が、図星を突かれてバツの悪そうな顔をして黙り込む