第9章 春高!
「私は信じて欲しかったんやと思う、どんなに私が侑を好きやったか…」
そう言って彼女は両手で包み込む缶コーヒーに視線を落とす
「あのさ…宮さんの肩持つわけじゃねぇけど、橘さんの気持ち汲み取るのってめちゃくちゃ難しいと思う」
「え?」
「橘さんは誰にでも分け隔てなく親切だから、自分に好意を持ってくれてるとか…スゲェ分かりづらいんじゃねぇかな」
「…え、そう?!」
「だって俺のこと…その…好きだったんだろ?そんなの全く気付かなかったもんな」
「…それは影山くん側にも問題あると思うけど」
不服そうな顔をして彼女が膨れる
「いや、まぁそれは…」
「冗談」
そう言って橘さんはイタズラっぽく笑う
「そんで多分好きになった方からしてみれば、みんなに親切なのは不安になる」
「…そうなんか」
「男はみんな、好きな子には自分だけを特別扱いしてほしいと思うんじゃねぇの
だから…
好きなやつにはちゃんと言葉と態度で伝えたほうがいい」
「やば…めっちゃ腑に落ちた
影山くん、恋愛のスペシャリストやん」
「なわけねーだろ」
「私、自分の気持ち信じて欲しかったって思うばっかりで、信じてもらう努力全然してなかったって気付いた」
「努力ってゆーか…橘さんは、その…多分自分の気持ちを押し殺しがちだと思うから、もっと甘えてもいいんじゃねぇの?たまには思うように泣いたり怒ったりすればいい…と俺は思うけど」
「…そっか」
「橘さんはいつも圧強ぇくせに、へんなとこ気にしぃだからな」
「!!影山くんまで圧強めって思ってたん?!」
「ハハ、まぁ橘さんはもっと自分に自信もてよ」
不服そうにしている彼女の肩をポンと叩いて立ち上がる
「ありがとう影山くん、めっちゃ心の整理ついたわ」
「ならよかった」
「明日も試合やのにごめん、お風呂まだ?」
「おう、今から行く」
「…じゃあまた明日」
「おう」
彼女と別れ、風呂につくともう他の1年生3人は中にいた
日向と山口が湯舟にいて
泳いでる日向に山口が
「日向、今日は元気だな」
と声をかける
確かに日向のヤツ、昨日は湯舟に沈んでたからな