第9章 春高!
ー影山side
「おせぇ…」
ニュース番組のコーナーで春高が特集され、今日の放送では俺たちの試合が映るかもってので、みんなでテレビの前に集まっていた頃
橘さんの姿がないのを不思議に思って、部屋を出るとダウンを着た彼女の後ろ姿を見つけた
「どっか行くのか?」
「あ、影山くん…あの…侑とちゃんと話しようと思って」
そう言えば体育館で荷物を片付けてた時、宮さんが来てそんな話をしてた気がする
「そうか、気をつけてな」
「うん」
そう言って彼女は階下に降りていった
ニュース番組が終わり、みんなでひとしきり話した後キャプテンが
「さぁ、明日はいよいよ音駒との試合だ。今日は早く風呂に入って寝ろ、1年から使っていいからな」
と言う
日向たちは風呂の準備をするために自分の部屋に向かったけど、俺は部屋に戻る前に谷地さんに声を掛けた
「なぁ橘さん、まだか?」
「あ、うん…まだ戻ってないみたい」
「そっか」
「ミヤアツムさんのとこ…だよね」
他の人に聞こえないように谷地さんがコソっと言う
「…ああ、だいぶ暗くなってきたし迎えにいってくる」
そう言って部屋を出て階段を降りる
外に出ようと宿の引き戸を開けたところに橘さんが立っていた
「…わ、影山くん」
「お…おう」
「もしかして探しに?ごめん、心配かけて」
「そ、そんなんじゃねえし」
チラッと彼女の顔を見ると、少し目が腫れている
…泣いてたのか?
誰もいないのを確認して、ロビーのソファに彼女を座らせる
自販機で温かいコーヒーを買って差し出すと、彼女は礼を言って両手で缶コーヒーを受け取った
「…で、その…宮さんとはちゃんと話せたのか?」
「あ、うん…」
「それで橘さんは納得できたのか?…宮さんがその…浮気したって理由」
「納得はしてへんけど理解はした」
「?」
「結局私らはお互い、自分が好きやって気持ちばっかりで相手の気持ちを信じられへんかった」
ヤベェ
話がテツガクテキすぎて頭が追いつかねぇ
恋愛難しすぎだろ
好きだけじゃだめなのかよ
自分の気持ちだけじゃだめなのかよ
「私、浮気されたことよりも私が侑を思う気持ちを信じて貰えんかったんがショックやったんかもしれん」
「…そっか」