第9章 春高!
「…よろしくお願いします」
そう言うて恥ずかしそうにする歩が可愛いくてたまらん
「ほな今から彼氏、彼女ってことやな」
「…なんか実感ないわ」
ガキの頃からいつも一緒にいたから、お互い好意を持ってたとしても急に恋人同士になるって不思議な感じや
「ほな…なんか恋人らしいことしよか」
「…急になによ」
「ハグしよう」
そう言って両手を広げる
「え?!ハグってそんな感じでするもん?!」
「いや分からんけど、俺も恥ずかしいねんから早よしてくれ」
「雰囲気!…ほないくで」
そう言うと歩は恐る恐るといった感じで、両手を開いてゆっくり近づいてくる
「待て待て!お前俺と相撲でもする気か!」
「知らんやん!初めてやねんもん分からんし!」
いつもと変わらん軽口を言う歩の腕をグッと引き寄せる
「わわわ」
バランスを崩して、もたれかかるように俺の腕ん中に収まる歩
長いこと一緒にいたけどこんな風に抱きしめるのは初めてで
意外と華奢なんやなってこととか
めっちゃええ匂いするってこととか
何より歩が俺の彼女になったんやって喜びで胸の中がいっぱいになった
ぎこちない手つきで俺の背中に歩の腕が回される
待って、めっちゃヤバイ
ほんま好きや
こんな幸せがあってええんか
心臓めっちゃ速いねんけど気付かれてるかな
やとしたら恥ずかしいな
歩はどんな顔しとるんやろ
強く抱きしめてた力を少し抜いて身体を離して歩の顔を見つめる
!!
歩は真っ赤な顔してて…
今まで色んな顔見てきたけど
今日俺は初めて、歩の女の顔を見た
熱っぽい視線で俺を見つめる歩
たまらんくなって頬を両手で包んで顔を近づける
「…待って」
唇が触れそうになった瞬間歩が掌で俺の唇を押さえる
「ごめ…ちょっと調子乗りすぎたわ」
さっき告白して付き合ったばっかやのに、いきなりキスは驚くよな
俺は歩の身体を解放する