第9章 春高!
罪悪感で死にそうやったけど
もしかしたらこの女と浮気したら歩しか見えてへん自分に少し余裕出来るんちゃうかって思った
それにさすがの歩も、俺がこんな風に遊んでるって知ったら必死になってヤキモチ妬いて、俺のことしか考えられんようになるんちゃうかって…
そしたらヤキモチどころか一発ゲームオーバーやったっていう…
歩は軽蔑の眼差しを向けながら俺の話を聞いている
「…っていう何の弁明もないんやけど」
「…」
「なんか言うてくれよ」
「…それで…
実際浮気してみてどうやったん?侑の気持ちに余裕はできたん?」
俺は左右に首を振る
「全然、やっぱり歩やなかったらアカンって思い知っただけやった」
「なんやそれ、意味ないやん」
「…そや、俺は意味ないことして、お前を失った」
「そっか、でもまぁほんまのこと聞けてよかったわ
私、侑が他の人のことを好きになって、私のこと好きやなくなったから浮気したんやって思ってたから」
「そんなわけ…お前、俺がどんなにお前のこと…」
「だから知らんってそんなん、それにそっちこそ私がどんなにあんたを好きやったか知らんやろ?私は…」
歩は言葉を詰まらせて、それから小さな声で
「一生侑と一緒にいたいって思ってたで」
と言った
歩の目からツーッと涙が零れる
それを見て胸がギュウと締め付けられて
自分が犯した過ちの大きさに今更気づいた
歩がそんなに俺のことを好きでいてくれてたなんて、思いもせーへんかった
それを知ってしまったらもう止められへんかった
「歩、今からでは遅いか?俺は今でもやっぱりお前が好きや」
歩の両肩を掴んで必死に訴える
「…ごめん」
「何でや、他に好きな男が出来たからか?!」
歩は黙り込む
その沈黙はきっと肯定なんやろ
それでも俺は引き下がれずに
「あん時…無理にでもちゃんと話してたら何か変わってたんか?!もっかいチャンスくれ、今度は絶対大事にするから!」
となりふり構わず懇願する
でも、歩は黙って首を横に振った
「今話してみて分かった、私らはどのみちどっかで上手いこといかんようになったと思う」