第9章 春高!
ー歩side
宿に戻って夕飯を食べ、お風呂までの少しの時間
宿の近くの公園に向かう
ノースフェイスのダウンを着込んで公園に着くと、ベンチに腰掛ける侑の姿があった
「ごめん、寒いのに待たせて」
「ううん、今きたとこやし」
…
しばらく沈黙があって、耐えきれずに
「今日はええ試合やった、お疲れさま」
と声をかける
「おお…まぁ負けたけどな
…てか、さっきは悪かったな」
「え?」
「俺のクラスメイトに絡まれてたやろ?悪いな、転校してまで嫌な思いさして」
「…ああ、それは全然気にしてへんけど」
「それと、改めてほんまにごめん」
侑は私の方に向き直ると、深々と頭を下げる
「ちょ…やめてよ、もういいから」
「俺にはお前しかおらんって思ってたから、ずっと自分がフラれて傷ついたことばっかりに意識がいってもーてた」
「…一個聞きたいねんけど、じゃあ何であんなことしたん?」
「…好きすぎて」
「え?」
好きすぎて浮気するとはどういう了見か
眉を顰めて侑を見る
「多分…俺は、お前が思ってるよりずっとずっとガキの時からお前のことが好きやった
そやから…実は歩も同じ気持ちでいてくれて、しかも俺の彼女になってくれた時はほんまに死ぬほど嬉しかった」
改めて真面目な顔してそんなこと言われたら、目を逸らせへん
「でもな、正直毎日毎日めっちゃ不安やった
歩はほんまに俺のこと好きなんかって」
「は?なんで?」
「お前ってさ、何か歳のわりに大人びてるからワガママ言うたりヤキモチ妬いたり全然せーへんかったやん?まぁ言うたら今日みたいにうちわとか持って応援しに来てる女の子とかがいても、全然気にせーへんやろ」
「いや、多少はモヤっとするかもしれんけど、それを侑に言うたところで侑のせいじゃないし、悪いことしてるわけでもないねんからしゃーないやん」
「そういうとこ!お前聞き分けよすぎんねん!もっとさ、好きやったら『あの女の子らとどういう関係なん?!私が彼女やってちゃんと伝えてや!』ぐらい言うてきてくれや!ほんまに俺のこと好きなんか不安になるやろが」
「そんなん思ってても言わへんわ!そんなん言うて重い、面倒臭い女やと思って捨てられたら嫌やもん!」
「…捨てるわけないやろ!俺がどんだけお前のこと好きか…」