第9章 春高!
「侑はアンタを捨てて私を選んだんやもんな、みじめやな〜まぁアンタには東北の田舎モンぐらいがお似合いなんちゃう?」
「…」
これ以上歩を侮辱するなら僕も黙ってられない
口を開こうとした瞬間
「おかしいなぁ、俺が知ってる話とちゃうけど」
女生徒たちの後ろから声がする
「…治くん」
歩に因縁つけてた女生徒の顔が引き攣る
「は?誰なん?俺、アンタのこと知らんけど」
「え、私は侑の…その…」
「あぁ、侑は歩を捨ててアンタを選んだんやっけ?俺ら毎日一緒におるけどそんな話初耳やわ。大体歩に捨てられたんは侑の方やしな」
宮治が言うと、女生徒は真っ赤な顔をしながら何か言い返そうと必死で言葉を探す
「そんなわけっ、侑言うてたもん!中坊の彼女の方が自分に惚れてて相手したってるんやって!」
「あー、悪い。それウソやわ」
宮治の後ろから宮侑が歩いてくる
「侑…」
「俺人生で人好きになったん、そこにいる歩だけやし」
「お前歩にフラれて、家破壊する勢いで暴れてたもんな」
「サム、東京体育館のど真ん中でそのエピソードきついわ」
双子の会話を聞いていた女生徒は
「は?ありえへん、最低!」
と言うと宮侑にビンタを喰らわしてスタスタと去っていった
「最悪やわ、試合は負けるし女にどつかれるし」
「お前が悪いんやろツム」
「…まぁ、せやな」
目の前で繰り広げられる双子の漫談に思わず
「何しに来たんですか?」
と問う
「たまたま荷物取りに来たら、歩がうちの生徒に絡まれてんのが見えたからな」
「ありがとう治」
歩が言うと宮侑が
「俺わい!俺なんかビンタされたんやぞ?!」
と喚く
「「自業自得やろ」」
歩と宮治が息ピッタリで突っ込む
ああ、この空気感…
彼女がどれだけの時間をこの人たちと過ごしてきたのかまざまざと見せつけられる
「なぁ歩…約束は約束や。お前の連絡先消して、もう電話したりラインしたりせーへん。でもそのかわり今晩ちょっと時間くれへんか?最後にちゃんと話したいねん」
真剣な眼差しで宮侑が言う
「…わかった。私も侑とちゃんと話せなって思ってた」
彼を真っ直ぐ見つめて歩は答えた