第1章 出会い
「え、無理かな?」
真剣に言う橘さんが面白くて、荷台にどかっと座る
「じゃあ漕いでよ」
ペダルはびくともしない
「アハハ、あかんわ!」
「ハハ、そりゃそうでしょ」
2人で笑いながら自転車を降りる
なんか…
案外こういうタイプ嫌いじゃないのかも
今度は僕が自転車に乗って
「はい、乗りなよ」
「え、重たくて動かんかったらごめん」
彼女は少し照れくさそうにして荷台に跨る
「質問」
「なに?」
「これ、私どこ持ったらいいの?」
「知らない」
そう言ってペダルに力を入れる
彼女は思ったよりも軽くて
ずっと僕のジャージの裾をギュッと握っていた
坂道を下って行くと坂下商店にみんなが集っている
そこで自転車を降りて、彼女はみんなに挨拶をする
「今日は見学させてもらってありがとうございました。みんなと一緒にやっていきたいですけど、期末テスト終わってから入部でもいいですか?」
「ああ、まだ転校してきたばっかりだし、負担にならないようにしてくれればいい。こちらはいつでも大歓迎だから」
澤村さんが答える。
「ありがとうございます!ほな翔陽帰ろ!」
「おう、みんなお疲れした!」
2人が自転車に乗って楽しそうに帰っていく
その後ろ姿を複雑な想いで見ていた
「月島ー集合」
菅原さんの声
「なんですか?」
「橘さんってお前の彼女?」
「はぁ?違いますよ」
「そっか、2ケツで現れたからてっきり」
「ただのクラスメイトです」
「ふーん」