第1章 出会い
「歩すごいね」
「何が?」
「月島くんってほら、近寄りがたいじゃん?ちょっとコワイって言うか」
聞こえてるし
「そう?月島くんが怖かったら、アランくん見たらびびるで。中身はええ人なんやけど見た目…あ、写真見る?」
はぁ…
本当なんなのあの人
調子狂う
ー放課後
「あ、歩?!」
「翔陽?!バレー部やったん?」
橘さんと日向がお互いを指差す
え、何この人たち知り合い?
「なんだなんだ!日向!田中先輩を差し置いて、カワイコちゃんと名前呼びとはどういうわけか説明してもらおうか?」
「あ、歩は6月から転校してきたんスけど、チャリ通で初日道に迷ってる所を俺が案内してやったんだよな!」
「そうです!高校まで案内してくれて、えらい親切な中学生やな〜思ったら、ここの生徒でした」
「おいコラ!そんなん思ってたのか!」
爆笑の渦が巻き起こる
コミュ力モンスター同士の思考回路は分からない
騒がしい
でもー
練習が始まると橘さんは嘘みたいに静かになって、真剣な眼差しでコート内を見ていたり、清水さんに熱心に質問をしたりしている
どんだけギャップ搭載してるんだよ
ー練習が終わり、みんなで下校する
「あ、やば」
橘さんがカバンをガサガサ探っている
「どうしたの?」
「宿題、机の中かも」
「はぁ…何やってんの」
「取ってくるし先帰ってて!」
彼女はバッと踵を返し走り出す
「待ちなよ、真っ暗だから僕も行くよ。山口、先行ってて」
「え、ありがとう。月島くんめっちゃ優しいな」
こんな風に女の子と2人きりになる経験はあんまない
教室の電気をつけてあげると、橘さんは自分の席に向かい引き出しから宿題を取り出した。
「あったあった!ごめんな」
彼女が駆け寄ってくる
「帰ろ」
「ごめんな、山口くん待ってるんちゃう?」
「先行ってって言ったから大丈夫じゃない」
「でも追っかけよう」
自転車置き場まで行くと彼女は急いで自転車に跨る
「はい、後ろ乗って!」
「え?」
これは関西風ジョーク?それとも素?
不思議そうにしてる彼女を見てたら笑いがこみあげてきた
「ハハ、橘さんが僕を乗せてくれるの?」