第9章 春高!
「あ、スパイカーとブロッカーが1対1になっても、常に1対6だってことを忘れるなってやつ?6人いれば対処できるもんね!」
「そう、多分ツッキーは止めることを目的とせずフロアディフェンスに角名さんのターン打ちのコースを伝えてたんやと思う。2セットずーっと」
「…コワ、月島君コワ!」
ブロックでドシャット出来たらそりゃ気持ちいいやろけど、ツッキーはずっと冷静に目の前の情報だけを掴んでいく
そんでトータルディフェンスで確実に捉える
稲荷崎5:8烏野
稲荷崎1回目のタイムアウト中
突然ノヤさんが話し出す
「俺、ガキの頃超ビビリだったんすよ
あんま覚えてねぇけど小学校あがるくらいまでかなー
虫がこわい、犬がこわい、おばけがこわい
あと、人見知りだった気もするし」
誰の話をしてるんだろうと首を傾げる
私の知るノヤさんは社交的で男らしくて無敵
でも…必ずしもその人がイメージ通りとは限らないことを私は知ってる
「えっと…前世とかの話?」
東峰さんが言うとノヤさんは
「ガキの頃っつってんじゃないですか!」
と言い返して、そのまま話を続ける
「うちはジイちゃんがリアル獅子の子落とし野郎なんで、大体克服しましたけど」
「あのキョーレツなじーちゃんな!
2回見たけど2回とも違う美女連れてた」
と田中さんが言う
「ミヤアツムのサーブの時、足が床に張り付いてなんか懐かしい気がしたんす
…こわいって思うことが
でもじいちゃんが言ったんすよ
『夕坊、こわがることの何が悪いかわかるか?
もったいねぇからさ』
選択肢が増えるのが分かっててやんないのはつまんねぇ、分からずじまいはもったいないって、そんでそれでももし怖かったら…誰かに助けて貰えばいい」
ノヤさんのじーちゃん、めっちゃいいこと言う
やる前から苦手だと決めつけてやらなければ何も始まらない、知らないから怖い、でも勇気を出して一歩踏み出してみれば昨日とは違う自分になれる
タイムアウト明け、侑のサーブから始まり、相変わらずジャンフロでノヤさんを狙ってくる
「西谷!前!!」
木下さんの声がして、ノヤさんは一歩前に踏み出す
さっきまで一歩下がってアンダーで捌くことが多かったのに…
前に踏み出したノヤさんがオーバーでサーブを捉え、あっという間に東峰さんがスパイクを決める