第3章 春高予選
ー月島side
寝てると思って話してたんだろうけど全部聞こえてた
バーベキューの途中で、何故か歩が黒尾さんに連絡先を聞いた
連絡先を交換してる時の歩は仁王立ちしてたし、決闘でも申し込みそうな雰囲気だったけど、その後にデートしようとか連絡してとか言われてるの見て
正直イラついた
何でそんな人に自分からわざわざ連絡先聞くのって思ってたけど
まさかそんな約束させられてたなんて知らなかった
歩が僕のために…
歩はいつも他人のことを一番に考える
みんなが一緒に東京に行けるように勉強を教えたり
マネがいない音駒が練習に専念できるように手伝ったり
3年生と僕らが今のチームで少しでも長く戦い続けられるように、チームのことを考えたり…
僕は僕のことばっかりだ
兄ちゃんに勝手に期待して失望して
自分に失望したくないから本気にならないようにして
歩が他の男と仲良くしてるの見てイライラして
ちゃんと見ててって僕は言った
変わらなきゃいけない
バレーが面白くないのは下手だからだって木兎さんに言われた
もっと練習して上手くなって
バレーにハマる瞬間
僕にもそれは訪れるのだろうか
その瞬間が来たら
その時は君に見ててほしいと思う
家に着くと兄ちゃんが出てきた
庭に出て合宿のことや、近況を話す
ちゃんと面と向かって話すのはいつぶりだろう
兄ちゃんは兄ちゃんで色んな思いを抱きながら
まだバレーを続けている
「蛍、好きな子でもできた?」
「は?何言ってんの」
「だってなんか…雰囲気柔らかくなったなって」
「…」
「図星だな」
「違うし」
「へー蛍に好きな子ねぇ」
「違うって言ってるじゃん」
「いつか紹介してね」
「…しない」