第2章 合宿
「うん、ほんまはみんなみたいに進化したいって思ってるのに、どっか一線引いてわざとアツくならんようにしてるような」
「ちょっと分かるかも」
「でも今のこのメンバーで戦えるのは、春高が最後。1日でも1試合でも長く、3年生と一緒にプレーしたいと思わへん?だって予選で終わったら、そこで潔子さん引退やで?私はそんなん嫌や」
「私も嫌だ!」
やっちゃんが大声で答えるから
シーッと口の前で人差し指を立てる
「あ、ごめん」
「そのために…チームのために、ツッキーに心の底から変わりたいって思ってほしかった。私この前の合宿で音駒のマネやった時に黒尾さんのプレー見て、こう…アツくなったんよ。派手なプレーじゃないけど、冷静にワンタッチ取りに行くブロックっていうか。ツッキーはタッパもあるしクレバーやから、絶対黒尾さんみたいになれるって思った」
やっちゃんはウンウンと頷いている
「最初黒尾さんがツッキーを自主練に誘ってくれたんは、全く偶然やったけど、それをキッカケにして何か思ってくれたらいいなって思って、次からも引きずってでも練習に連れてってくださいって頼んでん。結果、自分から参加してたみたいやけど」
「そうだったの」
「で、ツッキーをやる気にさせたら、ご褒美?いや罰ゲームとして、みんなの前で俺に連絡先聞いてこいって言われた」
「え、歩ちゃん、月島くんのためにみんなの前で、あんな…」
「別にツッキーのためじゃないし」
「歩ちゃんはすごいな…元々マネージャーやってたから、バレーにも詳しいし、みんなのことすごく見えてて…私なんて」
「なんで?まずこの合宿来られてる自体、やっちゃんのおかげやん」
「ふぇ?」
「だって、あのポスター描いて寄付金募ってくれたんやっちゃんやろ?私武田先生に聞いた時震えたもん。絶対3年間やっちゃんと一緒にマネやるねんって思った。この合宿でみんなが進化できたのは、やっちゃんのおかげやで」
「そんなっそんな私なんて!」
「あと…あのポスターから翔陽への愛がビシビシ伝わってきた」
耳元でコソッと言うとやっちゃんは真っ赤になって
「歩ちゃんっっっ!ちがっ!もう!!」
私の口を塞ぐ
「それは置いといて…私も歩ちゃんと3年間一緒に頑張りたい。だから何でも相談してね?」
「ありがとう」