第9章 春高!
「やっちゃん、昨日の夜も言うたけどな侑も治もアラン君も角名さんも、みんなめっちゃ上手くてヤバいけど、私は烏野が負けてるとは思ってない。あの人らも充分ヤバいし、ここにいるのはみんなどっかの県の代表で、楽勝で勝てる相手なんかおらんのやから」
「…そうだよね」
影山くんがサーブポジションに立つ
なんかいつもより研ぎ澄まされた雰囲気
ドォッっと凄い轟音を放ったサーブは際どいコースで稲荷崎コートに突き刺さる
『ノォォタッチエェース!!
なんというスピードなんというコース!!』
実況もこれは取れないなぁなんて言いながらざわつく
私とやっちゃんは顔を見合わせて、私が
「1番ヤバいやつおった」
と言うとやっちゃんがコクコクと頷く
タイムアウトを挟んでも影山くんの集中力は途切れずに、またもサービスエースを奪い取る
「なんかさ、翔陽ってヘタクソやんか」
「何故急に日向をディスり始めたの?!」
「いや、ちゃうちゃう。プレーヤーじゃない私から見てても、ヘタクソな翔陽は吸収して段々成長していってるってのが目に見えて分かるけど、影山くんみたいな元から凄すぎる天上人はさ、成長が目に見えづらくない?」
「確かに…影山くんに上手くなったね!なんておこがましすぎて、絶対言えない」
「そやろ、でもなんか春高来てから影山くんが一段上のプレーヤーになりつつある気がする」
「それはもはや雲の上の存在」
「強い選手やチームを見たり戦ったりすることで、研ぎ澄まされていってる気がするなぁ」
「つまり、歩語録でいくと?」
「サイヤ人からスーパーサイヤ人」
「なるほど!人間には理解不能ってことだね!」
影山くんのサーブから烏野が流れを引き寄せつつある
ジワジワと得点差も縮まり、稲荷崎がバタついてきたように感じる
そのタイミングで
ピーッと交代の笛が吹かれ、アラン君と交代でよく見知った人がコートに現れる
「北さん…」
「あの人…キャプテンだよね?公式戦の映像では結局見られなかったけど…その…やっぱり強いの?」
「北さん自体がめちゃくちゃ強い…ってわけではない」
私がそう答えるとやっちゃんは少しホッとした顔をする
「でも…チームを強くする人ではある」