第9章 春高!
ー歩side
2セット目
稲荷崎ペースで試合は進んで
稲荷崎14:7烏野と点差は開く
ここで侑のサーブのターン
今日はジャンフロの調子がええみたいで、ジャンフロの本数が多い
そして…
オーバーが苦手なノヤさんを狙い続ける
「西谷さんが狙われるなんて…」
やっちゃんが不安そうにコートを見つめる
ノヤさんはリベロとしては音駒の夜久さんに匹敵するハイレベルで、中学時代から活躍する名が通った選手だった
ーなのに
狙われる屈辱…
ノヤさんの顔から笑顔が消える
「ノヤさん、唯一オーバー苦手やからな」
「うう…西谷さんがんばれぇ」
やっちゃんは自分が侑のサーブに狙われてるかのように青い顔をしてる
それからも侑のサービスのターンだけで、相当得点を決められた
そればっかりか角名さんのスパイクを止めようと飛び上がったツッキーの完璧なブロックの隣をボールがすり抜ける
完璧なブロックやったはず
「角名さんはな、体幹がヤバいねん」
「え?」
「コースの打ち分け、手だけじゃなくて身体全体で出来るから、どんなにええコースにブロック飛んでも、そっから全然ちゃう方向に打ってきたりする」
「え…そんなのアリなの?」
「それだけやない、その体幹を活かして違うコースに打つようにフェイントかけながらスパイクモーションに入ることも出来る」
「…?」
「…つまり、角名さんが体勢的にクロスに打つ方向に飛ぶとするやん?そしたらブロックはそっち側に誘われる、でも本当はそれはフェイントで全然逆の方に身体捻って打ってくる」
「そんなことできるの?」
「しかも威力も精度も落とさず…怖いわほんま」
やっちゃんに角名さんの体幹の解説をしていると
『連続でレフトから尾白アラン!
3枚の壁を抜いて殴りつけるような1打!』
俄かに実況が熱を帯びる
アラン君の強打をただ凌ぐだけで精一杯の烏野を、畳み掛けるように連続でアラン君が打ってくる
『尾白アラン、ダイレクトで決めたー!決して打ち易くはない状況で一人3連続の攻撃
正に力でもぎ取る1点!!』
「…」
やっちゃんが言葉を失う