第9章 春高!
ー歩side
「田中さん…苦しそうだね」
やっちゃんがスコアを見ながら呟く
確かに今日、田中さんのスパイクはブロックに捕まったりアウトになったりして気持ちよく打てない展開が続いている
こういう時、大抵の人のメンタルは潰れてしまう
どんなに技術が優れた選手でも、メンタル次第では調子を発揮出来ないことも多々ある
でも…
「サッ来ォォい!!」
コートから田中さんの叫び声が聞こえる
「田中さんってさぁ…カッコいいよな」
「…え?歩ちゃん、田中さんみたいな人タイプだったっけ?」
「いや、そういう意味じゃないけど…ってそれも失礼やけど、田中さんって知れば知るほど味が出るスルメ的な」
「でた、独特表現!」
「昨日の夜な、稲荷崎の映像見てから2年生の部屋にいたんやけど」
「え、そうなの?!歩ちゃんどこ行ったのかなって思ってたんだけど、何で2年生の部屋に?」
「新山女子の選手に田中さんの知り合いがいるんやけど、その人と田中さんが密会してる現場をたまたま目撃してさ」
「え?!どこで?!」
「外で。で、目撃してたことが田中さんにバレて、私が覗いてたって勘違いして呼び出された」
ー昨夜
稲荷崎の映像を見て、部屋に戻ろうとすると田中さんに
「橘、さっきのことだけどよ」
と呼び止められた
「さっきって何ですか?叶歌さんと密会してたこ…
「だぁぁ!言うなー!」
慌てた田中さんに口を塞がれる
「密会ってなんだ?田中、さっきの脈アリ美女と密会してたのか?」
ニヤニヤしながら縁下さんが言う
「橘さん、2年の部屋に集合!詳しく!」
木下さんに言われ、2年生の部屋に連れて行かれる
「田中さん、だから誤解ですって!私はたまたま夜風に当たりに行っただけで別に覗いてませんから」
「…それはもう分かった、そんであの後お前戻ってくるの遅かったけど、叶歌となんか喋ってたのか?」
「そんなの内緒に決まってるじゃないですか」
「そーだぞ田中。女の子同士の恋バナの中身聞くなんて野暮にも程があるぞ」
私たちの会話を聞いていた縁下さんが言う