第2章 合宿
「でも聞いてもらえてスッキリしました。梟谷グループでの私の印象はヤベェ奴だと思いますが、赤葦さんだけでも本当の事知っててくれたら、それでいいです」
「ならよかった。また何かあったらいつでも言って。木兎さんからの連絡がしつこいとかね、携帯かして」
私は赤葦さんに携帯を渡す
「はい、これ俺の連絡先」
「ありがとうございます!私この前の合宿の時、赤葦さんのプレー見て、どんな人か話してみたいって思ってたから、話せて良かったです」
「…そう。一つ聞いていい?」
「何ですか?」
「もし今キスしたら、俺のことも意識する?」
?
理解が追いつかない
え?赤葦さんとキス?
ボンッ
顔が爆発したみたいにアツい
顔を両手で覆って下を向く
「冗談だよ、またね歩ちゃん」
そう言って赤葦さんは去っていった
ななな何やったんや
混乱して爆発しそうな頭に赤葦さんがくれた冷たいペットボトルを当てる
この合宿ほんまに疲れた
「じゃあ、また」
「おう、またな」
大地さんと黒尾さんが声を掛け合う
黒尾さんと目が合う
こっちに近づいてきて、肩にポンと手を置かれ
「連絡、してよね」
少し屈んで耳元で言われた
「え、あ
…はい」
「はいはい、歩ちゃんが音駒マネなのは今日で終わりだから」
スガさんが間に割って入る
「へぇ〜」
黒尾さんは両手をパッとあげて、意味ありげな笑顔を残して去っていった
帰りのバスはやっちゃんと隣に座る
しばらくバスが走ると、合宿の疲れからかほとんどの部員が寝入っているようだった
やっちゃんがチラッと私の方を見て、小声で話しかけてくる
「歩ちゃんの好きな人って、音駒のキャプテンさんなの?」
「え、違うよ」
「そうなんだっ、さっき連絡先聞いてたし、帰り際も意味深だったから…」
「んー、やっちゃんにはほんまのこと言っとくわ。みんなこの合宿に向けて新しいことを練習してたやんか?翔陽と影山くんは新速攻、ノヤさんはオーバーハンドでセット、東峰さんや田中さんのサーブとか…」
「うんうん!みんなすごい頑張ってた!」
「その中でツッキーだけが…私には迷ってるように見えた」
「迷ってる?」