第9章 春高!
「あんまりだよ…」
両手の拳をぎゅっと握りしめてやっちゃんが呟く
「だって…自分よりずっと大きい相手と戦う日向にとって、影山くんとの速攻は文字通り必殺技で、自信もあって…なのにそれを目の前で決められて、自分は止められて…ねぇ歩ちゃん、日向大丈夫かな?」
「分からん…でもな、鴎台の星海選手おるやん?」
「日向ぐらいの身長なのに、すごい活躍してた人だよね?」
「うん、あの人を見て、翔陽はどう思うんかなって私心配してた…翔陽は小柄でも速くて高いやん?けど、自分と同じように小柄で自分より上手い人みて凹んだりするんかなって…でも違うかった、なんかこう言い表せられへんけど悟空が強い敵に出会ってオラワクワクすっぞってなってる感じ?」
「歩ちゃんの表現は毎度独特だね…でも少しわかる気がするかも、だって今の日向の顔、全然凹んでる顔じゃないもんね」
「うん、大丈夫」
自分に言い聞かせるように大きな声で言った
大丈夫
だって誰の目も死んでない
そして翔陽が再び飛び上がり
放ったスパイクはアウト
「じゃない!」
ピッと笛が吹かれて、稲荷崎にボールタッチ有の判定
「今、日向はわざとミヤアツムさんの指に引っ掛けたってこと?」
「そやな…見えてたってことやろな」
「見えてた?」
「ツッキーがな、擬似ユース合宿の時に珍しく
おい、チョット付き合ってくんない?
って翔陽を自主練に誘ったことがあったんやけど」
私はモノマネしながらやっちゃんに説明する
「えええ!月島くんが日向を自主練に?!」
「そうそう、びっくりやろ?」
「大丈夫?珍しすぎて槍とか隕石とか降ってこなかった?」
「ギリな(笑)で、そん時ツッキーが翔陽のことを
アイツが相当見えてるスパイカーなのは間違いないから、練習相手に使わない手はないって言ってた」
「そうなんだ…なんか嬉しいね、月島くんが日向のことそんな風に思ってくれてるの」
「うん、しかもそのブロック練習してる時のツッキー超楽しそうでさ、いい顔してた」
あの時のツッキーの楽しそうな顔を思い出しながらコートに目をやる