第9章 春高!
あと、俺が歩の元彼やって言うてから何人かが闘志剥き出しの目で俺を睨んできよる
「おーこわ、歩ぎょーさんナイトがおるみたいやけど、お前の王子様はどいつなん?」
「なっ、誰もちゃうわ!」
紅い顔して歩が言い返してくる
「そっか〜誰もちゃうんか、そら良かったわ
アンタら言うとくけど、歩の初めてはぜーんぶ俺とやから」
「なっ!!まじで何なん!いらんこと言わんとい…
「へぇー、あなたが歩の元彼だったんですね?」
声を荒らげる歩を制するように、背高眼鏡が近づいてきて穏やかな口調で話しかけてくる
口調は穏やかやけど、俺はわかってる
コイツさっきからめっちゃ俺のこと睨みつけてきとった
てか歩のこと軽々しく呼び捨てにすんなや
「そやったら何?」
「歩は元彼のせいで人間不信になったって言ってましたけど、あなたがそうしたってことですよね?そんな風にしといて今更よく普通に話しかけられますね」
「は?何がいいたいん?」
「これ以上歩を傷つけるなら許さない」
「許さないって、お前歩の何なん?」
「もう、ツッキーいいから!相手にせんでいいし、行こう」
歩は背高眼鏡の腕を掴むと、俺を一瞥して歩き出す
「あーあ、そんな悪態ついてボロ負けとかなったら恥ずかしいなぁ」
ニヤニヤしながら呟くと
「絶対負けません」
飛雄クンが真顔で言う
あー嫌や、本気で勝てると思ってんの?
「絶対負けへんのか〜、ほな歩!」
後ろから呼ぶと彼女は足を止めてクルリと振り返る
「俺らが勝ったらお前、稲荷崎戻ってこいや」
どうせお前やって本気で烏野が勝つなんて思ってないやろ
「…分かった」
意外にも歩は即答する
どういうことや
「その代わり、ウチが勝ったら連絡先消して二度と連絡してこんといて」
そう言うと歩はスタスタと歩き去っていった
「おいツム、えぐい嫌われようやな」
治が苦笑いする
「せやな、でも約束したで
勝ったら歩はまた俺らんとこ帰ってくるって…
楽しみやなぁ」