第9章 春高!
「クロ、行くよ」
研磨さんの呼ぶ声がして、私は黒尾さんから解放された
黒尾さんはツッキーの方に歩いていくと肩に手をポンと置いて、ツッキーの耳元で何かをボソッと言うと、みんなのところに戻っていった
「じゃあ明日もせいぜい生き残ってネ」
黒尾さんがこちらを向いて言うと、大地さんが
「そっちこそだろ」
と答えて、私たちはそれぞれの方向に歩き出した
宿に戻る途中に隣の高級ホテルにゾロゾロと入っていく、新山女子のメンバーと出会った
さすがIH優勝校、扱いが違う
叶歌さんいるかな?
さっきのお礼言いたいなってキョロキョロしていると
あ、叶歌さん!
大勢の選手の中に叶歌さんを見つけ、近寄ろうとすると叶歌さんは私に気づかず、別の方に歩き出した
その視線の先を見ると…
ハッ!!!田中さん!!!
叶歌さんは頬を染めながら田中さんに何かを話しかけている
「ほぉ…」
後ろから声がして振り向くと
「縁下さんっ」
縁下さんはニヤニヤしながら田中さんと叶歌さんを眺めている
こんなゲスい顔してる縁下さん初めて見た
叶歌さんが立ち去ったのを確認すると、縁下さんが田中さんに近づき
「脈アリってやつだな」
と耳元で呟く
「くそが!気づかないフリしようと思ってたのに!」
木下さんと成田さんが頭を抱えながら取り乱す
「ていうかアリどころじゃないよな、開会式の時も思ったけど多分好…
「ヤメロー!」
畳み掛ける縁下さんを木下さんと成田さんが止める
当の本人、田中さんは…
「ミャクあり…とは?」
放心状態
「今まで俺にはミャクがなかった…?でも今の俺にはある?
つまり俺は今生まれたということ?」
「田中しっかりしろ!お前はとっくに生きている!」
混乱する田中さんに木下さんがツッこむ
カオス
「縁下のせいだぞ」
成田さんに言われた縁下さんは
「ハイハイ」
と適当な返事をして宿の中に入っていく
いつも濃すぎる1年生のせいで大人に思ってたけど、2年生の先輩たちにもこんな一面があるんやなって、ちょっと微笑ましくなる
特にいつもみんなのまとめ役で常識人の縁下さんが、あんな風に悪い顔しながら田中さんを煽るとか意外すぎた