第9章 春高!
ー赤葦side
おかしい
木兎さんのしょぼくれモードが早い
今日はまだブロックにも掴まってないし、別段調子が悪いこともないはず
原因は何だ…
「俺もメインアリーナが良かった…
メインアリーナの方がでっかい」
そこか!
木兎さんの弱点その6
目立ちたがり!
確かに烏野や音駒の試合はメインアリーナで行われ、俺たちの一回戦はここ、サブアリーナで行われている
目立ちたがりの木兎さんはギャラリーの少ないサブアリーナでの試合に拗ねているのだ
「まぁいいや、そのうちノッてくるだろ。よくあることだ」
木葉さんたち3年生が言う
「先輩、頼もしいです」
しょぼくれた木兎さんのことは気にせず、他の先輩たちにトスを上げる
東京代表のチームでレギュラー張ってるんだから、木兎さん以外の皆さんだってみんなめちゃくちゃ上手い
特に木葉さんなんて自分に上がったトスを、スパイクモーションから更にトスしたりするんだから驚かされる
そんで
木兎さんがソワソワし始めた
そろそろだ
相手チームのタイムアウト中、木兎さんのところに駆け寄る
「木兎さん、ここは言わばセンターコートですよ
メインアリーナは確かに大きく人も多い、でもその中のせいぜい4分の1しか木兎さんを見ていません。でもサブアリーナで戦ってるのは俺たちだけ、全員があなたを見ていますよ」
木兎さんの表情が動く
もうひと押し
ギャラリーに目をやると日向と歩ちゃんが目に入る
「それに、弟子も見に来てますよ
あと…惚れた女にいいとこ見せなくていいんですか?」
「あっ、こっち見た 木兎さーん!」
俺たちの視線に気づいた日向がエースの心得Tを掲げながら木兎さんの名前を呼び、その隣で歩ちゃんもピョンピョン跳ねながら、両手を振ってる
惚れた女にいいとこ見せる…
それは何も木兎さんに限ったことじゃない
「さっ、木兎さん行きますよ」
「っしゃー!日向!歩俺の背中よーく見とけ!」
2人を指差して叫び、完全復活した木兎さんがコートに戻る
それからの木兎さんは水を得た魚のように活躍し、終わってみればストレート勝ちだった