第9章 春高!
いよいよ一回戦
VS椿原学園
私とやっちゃんはコート脇のギャラリーから、みんなを見守る
ピーッと笛が吹かれ、影山くんのサーブから始まった
でも強力なジャンプサーブは相手のコートを超えてアウトになる
その後も烏野サイドはミスが目立ち、翔陽と影山くんの変人速攻も合わずに、翔陽がヘディングで相手コートに押し込む場面もあった
私は戦いにくそうなコート内のみんなを見て、それから天井を見上げる
「眩しいな」
ボソッと言うと、やっちゃんが
「さっきコーチが、この体育館の床と照明が最初の厄介な敵だって言ってた」
と教えてくれる
やっぱり…
そして、その影響を最も受けるのは
寸分の狂いもない精密な影山くんのトスワーク
天井の高さの違い
照明の明るさの違い
…でも私は知ってる
影山くんは大丈夫
一つ一つのプレーで徐々に修正していく
バレーに能力全振りの影山くんやから
何も心配はいらん
でもここで得点を離されすぎるのは良くない
そう思ってコートを見ていると
「あ、ピンサー山口くん!今日は早いね」
やっちゃんが言う
「そやな、ここであんま点離されたら厳しいしな」
堂々とした表情で山口くんがコートに立つ
山口くんが放ったボールは、いいところに入って相手を崩し、上手くブロックで絡めとる
サーブで崩して、ブロックで仕留める
山口くんが目指してたサーブアンドブロック
山口くんの2本目
ゆらゆらと揺らめく軌道
オーバーで捕まえようとした相手選手の指先に当たって、ボールはコート外へ
「サービスエース!!!!やっば!山口くんやっば!」
やっちゃんと両手を取り合って興奮する
烏野9:11椿原
3本目は決められ、山口くんはコートを出て行ったけど、空気を呼び戻すのに充分な仕事をした