第9章 春高!
「体調悪い?えっと…烏野の…」
「あ…歩です。橘 歩」
「歩ちゃんね、私は新山女子の2年、天内叶歌」
高身長美女、叶歌さんはルックスだけじゃなく心も優しく美しい、そんで声も可愛い
「体調は全然大丈夫なんですけど…なんか色々考えちゃって…ごめんなさい、これから試合に出る選手でもないのにこんな…」
作り笑いで答える私をじっと見つめて、叶歌さんは
「試合に出るとか出ないとか関係ないよ、歩ちゃんはマネージャーとして今日まで烏野のために一緒に頑張ってきたんでしょ?」
「まぁ…私なりにはそうですけど、せっかくみんなと夢にまで見た舞台に来れたっていうのに、私情でメソメソして…」
「そっか…私情って好きな人のこととか?」
「…はい、両想いなんやって思ってたんですけど…なんか昨日からすごい避けられてて…って本当ごめんなさい!これから試合の選手に」
初対面の叶歌さんに、しかも今から試合って人に私の惚れた腫れたなんて聞かせてどうする!
両手で顔を覆って天を仰ぐ
「ううん、でも私は歩ちゃんが羨ましいかな」
「え?」
「だって好きな人同じ学校、ってか昨日からってことはここに一緒に来てるバレー部の誰かなんだよね?」
「はい」
「毎日一緒に学校通って、部活して、しかも両思いかもしれないぐらいの関係だったんでしょ?」
「…はい」
「だれかを好きって気持ちは、時々こんな風に辛くって、涙が出ることもあるけど…力をくれることもあると思わない?」
「…?」
「確かに相手の態度に一喜一憂しちゃうけど…でも好きだって思う気持ちは自分だけのものだよ!その気持ちをパワーに変えるんだ…私は、だけどね?」
叶歌さんは笑って扉を開ける
「恋する乙女のパワー見ててよ!」
そう言って去っていった
叶歌さんは…
普段会うことも叶わない田中さんのことを、好きだって思う気持ちだけでこんなにも強い
それを力に変えて、コートの中で眩しく光り輝く
私は…
そっか
ずっと好きでいてくれたツッキーの気持ちに甘えてた
ツッキーの気持ちは関係ない
もう私のことを好きじゃないとしても…
あなたが好きで好きで、この気持ちは私のもの
私もこの気持ちを力に変えて見せる
そう決意して扉を開いた