第9章 春高!
第一試合が行われている間、そのほかのチームは振り分けられた体育館でアップをする
「よし、そろそろ行こう
思ったより試合の進みが早いみたいだ」
コーチがみんなに声を掛け、東京体育館に向かう
予想より早い出発にみんなそわそわしてる
電車が来るまでの時間で翔陽と田中さんが駅のトイレに駆け込む
「電車乗り遅れるフラグ」
ニヤニヤしながらツッキーが言うと
「おい、やめろ!」
と翔陽が言い返す
みんながトイレから戻ってくると、大地さんが全員揃ってることを確認して全員で電車に乗り込む
電車に乗り遅れなかった翔陽が、ツッキーに向かってドヤ顔をすると
「電車に乗ってるだけで、勝ちほこるのやめてくれる」
とツッキーが言う
ズキン
私以外の人には至って普通の対応
私なんかした?
昨日ランニングから帰ってきた時も、挨拶もなしに通り過ぎてったし…
明らかに避けられてる
モヤモヤした気持ちのまま東京体育館に到着する
あかんあかん
シャキッとしよう
「顔洗ってくるわ」
やっちゃんに伝えてお手洗いに向かう
いつやったかこうして顔洗って…
二口さんにからかわれて
そっか、あん時も…ツッキーのこと考えて顔洗ってた気がする
ユニフォーム姿にショートカット、私より大柄な女子バレー部員に紛れて、トイレの水道で顔を洗う
1月の水、やばいぐらい冷たい
でもやばいぐらい冷たい水で頭スッキリさせたい気分やしちょうどいい
首からかけたタオルで顔を拭う
このタオル
伊達工との練習試合の時、ツッキーが私の首にかかってたこのタオルで汗を拭いてた
ツッキー
頭ん中ツッキーとの思い出ばっかり
髪から滴る水に混じって、ポタポタと涙が溢れる
何でこんなに好きやのに
私はどこで何を間違えた?
「あの…大丈夫?」
後ろから声をかけられ、驚いて振り向き
私は慌ててタオルで涙を拭う
「あっ、大丈夫です…すみません洗面台占領して」
そう言いながら顔を上げると
この人は…
さっき田中さんに熱視線を送っていた高身長美女!
「…龍ちゃん…あ、烏野高校のマネージャーの子だよね?大丈夫?」
何でわかったん?と思ったけど、背中にデカデカと烏野高校排球部って書いてることに気づく