第9章 春高!
ー歩side
1月4日
めっちゃ早朝
チャリーンチャリンチャリーーン!
外でチャリのベル鳴ってる
「分かってるってもう!近所迷惑やから一旦やめて!もう出るから!」
玄関のドアを開けて自転車に跨る翔陽を叱る
「だって歩!東京だぞ?!今から東京!早く行こうぜ!」
「いや、私らが早くついたとこで、全員揃わなバス出発せーへんねんから!とにかくちょっと待って!」
大急ぎで支度をして、忘れ物があるかないかも分からんスーツケースを引きずって玄関を飛び出す
「いってきます!」
「お前…チャリなのにスーツケースって…」
「いや若干思ったけど」
学校に着くと、みんなパラパラ集まっていて私はやっちゃんが来るのを待ってから、昨晩用意しておいた横断幕やボールなどを積み込んでいく
翔陽たちも手伝ってくれたからあっという間に終わって、最後に自分の荷物を載せようとしたところで、ツッキーと目が合う
「おはよう」
「あ…おはよ」
ボソッと言うと、ツッキーは自分の荷物だけを荷台に載せてヘッドフォンをして去っていった
あれ…
なんか機嫌悪い?
それとも緊張してる
私はあの日ツッキーが1日中持って歩いてくれたスーツケースを自分で荷台に載せる
それからバスに乗り込んだけど
最近のツッキーなら平然と
「歩、隣に来なよ」
なんて言いそうなのに
さっさと乗り込んで、アイマスクにヘッドフォンでシャットアウトして窓にもたれかかっている
よっぽど緊張してんのかな?
私はやっちゃんの隣に座って、一回戦の対戦相手について話す
そして話しながらも別のことが気になる
考えんようにしてたし、誰も触れてこーへんかったけど
一回戦勝ったら
二日目…シードの稲荷崎といきなり当たる
「歩ちゃん、大丈夫?顔色悪いけど」
「ううん、大丈夫!緊張してんのかな…って私が緊張してどうすんねんてな!」
思いつく限りの稲荷崎の対応策を書いたノートを開いて、そのページを顔に被せて上を向く
「いい気はせんのよな…」
アラン君や北さん、治…そんで侑の顔が脳裏によぎる