第8章 それぞれの春高まで
ー歩side
1月3日
いよいよ明日は東京に向かう
みんなで目指した春高の舞台
「影山くん、明日朝早いんやから練習しすぎたあかんって烏養コーチが言うてたよ」
飛べ!の横断幕
東京オレンジコートに持っていくために畳みながら、一人残って練習してる影山くんに話しかける
「あ、おう」
近くで見ると案外大きい横断幕
ドリンクのボトルとボールと…それから
明日バスに積み込むものを確認していると
「橘さん…」
ボールを小脇に抱えた影山くんが近づいてくる
「ん?」
「明日、東京に行く前にハッキリ言いてぇことがある」
「…はい?」
「俺は多分…その…ずっと…橘さんのことが好きだった」
え?
ほえ?
急に何を言ってるのこの人は
でもひとつだけ確かなことは
影山くんは冗談でこんなこと言う人じゃないってこと
「…え、そうやったん?全く存じてませんでした」
「そうか、でも俺は正直、好きだからどうとか付き合うとか全く分かんねぇし…多分バレーばっかで、大事に出来ねぇ気がする
…それでも、この気持ちだけは伝えときたかった」
「…めっちゃびっくりしたけど、ありがとう」
「橘さんは今、月島のことが好きなんだろ?」
「…うん」
「アイツなら多分、器用にバレーも橘さんのことも大事にすると思う…ムカつくけど」
びっくりした
思いもよらんかった
バレーのことしか頭にないと思ってた影山くんが恋をしてて
その相手がまさか自分やったとは…
「多分…これから先も俺は橘さんのことが好きだと思う」
「え…」
「迷惑か?」
「いやっ、迷惑なんてことは全然!」
「前に言ったろ?日本代表になったら、その試合に招待するって」
「うん」
「そん時、俺は多分今よりは少しぐらい大人になってると思うから…その時は月島から橘さんを取り返す」
…なんか
とんでもないこと言ってるよな?
そんなことまっすぐ見つめられて言われたら怯む
「ひとつだけ教えてくれ」
「何?」
「橘さんは、俺のこと…好きだって思ったこと、あったか?」