第8章 それぞれの春高まで
彼女のマネージャーとしての働きぶりは申し分なかった
部員として侑と接する時も普通やった
ただ、アランや治と話す時のような笑顔を見せることはなかったけど
侑も侑でバレーボールに対しては真摯やから、彼女が入ったことでパフォーマンスが落ちるなんてこともなかった
むしろええとこ見せようとしてるんか、キレキレなぐらいやった
彼女も彼女でコート内にいる侑をジーっと見てる時があるし、なんでコイツら別れたんか知らんけど、側から見てたら完全にお互いまだ好きなまんまやった
ある日他のマネージャーはみんな帰ったのに、1人だけ残ってた歩に声をかけた
「橘、こんな時間までお疲れさんやな、なんかしてたんか?」
「あ、北さんお疲れ様です!うわっ!もうこんな時間…今までの部活の日誌読み返してたんですけど、全然整理できてなくて…持って帰っていいですか?」
「かまへんけど…熱心やな」
「はい、アラン君が今年全国制覇するって言うてるんで、私も自分が出来ること、なんかやりたいんです」
そう言って彼女は両手にファイルを抱えてニッコリ笑う
「ほな送って帰るわ、重たいし俺が持つ」
「いえ、そんな!悪いですから!」
「あかん、こんな時間に重い荷物持たせて1人で帰らせたら、俺がばあちゃんに怒られるわ」
「ばあちゃん?!北さん、ばあちゃんっ子なんですか?アハハ、可愛い…あ、失礼しました」
彼女は慌てて謝る
帰ってる途中歩は
「うちも両親共働きなんで、私も超おばあちゃんっ子ですよ!北さん、おばあちゃんが作る好きなおかずランキング言いながら帰りましょう」
とか言って、ずっと喋ってて、なんか俺も久々に楽しくて
気付いたら俺は毎日、帰る時に偶然歩だけが残ってないかな?って期待するようになってた
「橘、また今日も残ってんのか?」
「あ、北さん!北さんが練習終わったってことは…あちゃー、またこの時間か!はよ帰らんと…」
そう言って漂白されてたボトルを慌てて片付ける彼女
「北さん練習終わる時間いつも決まってるから、最近北さんが終わる時間で、はよ帰らなって気付きます!」
そう言って彼女が笑う
「ほな…毎日練習終わりに声かけたるわ」
「そんなん悪いですよ!って…まぁ結果的に毎日そうなってますけど」