第8章 それぞれの春高まで
ー北side
夜道を2人並んで歩く
そんで歩の家まで送って帰る
実は2度や3度やない
歩が稲荷崎でマネージャーしてた頃、彼女をこうして送って帰ることがよくあった
俺はあんまり口数が多い方ではないし、練習もアホみたいに遅くまで残ったりせんと、いつも決まった時間に帰ることが多かったから、チームメイトにも気づかれてなかったやろうけど。
「流石に寒いな」
隣を歩く歩にそう言うと、彼女は
「そうですか?東北の冬マジ半端ないですよ?こんなんで寒い言うてたら北さん、東北来たら凍死しますよ」
そう言って笑う
歩が転校して半年か
宮家のお母さんも言うてたけど、しばらく見んうちにまた美人になっとる
歩が入学してきた時、わざわざアランが俺に
「どうしてもマネージャーになって欲しい子がいる」
って言うてきた時はびっくりした
「別に俺はええけど、そんな凄いマネージャーなん?」
「俺は俺らの代で全国制覇狙ってる、そのためには歩が必要や」
その後アランに彼女がいかに優れたマネージャーかってのを力説されて、最後に
「ただ一つ問題なんは、歩と侑は最近まで付き合ってたんや」
「侑て宮侑か?」
「そう、そやから最初歩はマネージャーやらへんって言うてたんやけど、俺が無理矢理頼み込んで、OKしてくれた」
「…そういやなんか侑荒れとった時あったな」
「そやし、歩は自分が入ることで侑が不安定になって、チームに迷惑かけるようやったら、私のことはいつでも退部させてくださいって北に言うといてくれって」
「ふーん、分かった」
「ありがとう!俺の妹みたいなやつやねん、ほんま可愛らしいから可愛がったってな」
って聞かされてて
入部の日に初めて歩を見た時には度肝抜かれた
だってアランの妹みたいな子って聞いてたから
なんかこう
もっとイカツイって言うかパンチある系の子かと思ったら
スラッと華奢で黒髪をキュッと後ろに束ねた大人びた子で
正直言うて目を奪われた
そやのにアランとか治とか知り合いと話す時は人懐っこい笑顔見せるから、たまらん