第8章 それぞれの春高まで
振られた本人に聞くのも可哀想やしと思って、俺は何があったんか確かめるために歩に連絡した
でも彼女は
『本人に聞いてください』
って言うから、何があったか侑に直接聞くことにした
「なぁ、お前歩に振られたんか?」
「…おう」
情けない声出しよる
「何でや」
「…俺が浮気したから」
は?
待て待て、意味がわからん
「は?お前何ゆうてん?人でなしや人でなしやとは思ってたけど、歩のことは大事にしとるんやと思ってたのに!」
侑の胸ぐらを掴む
「…大事にしてた!好きや!今でも好きでたまらん!おかしなりそうや!」
いや、益々意味がわからん
「お前なにめちゃくちゃ言うてんねん!」
「好きすぎて…俺ばっかり好きすぎて、怖かったんや」
「何じゃそれ!そんなんで歩傷つけていい理由になるかボケが!」
俺は胸ぐらを掴んだまま壁に侑を押し付ける
「分かってるわ!分かってるけど…中学生相手に夢中になって不安でたまらんくて…こんな余裕ないの恥ずかしいやんけ!!」
怒鳴りながら侑が俺を突き飛ばす
「…なにをしょーもないこと言うてんねん!お前が恥ずかしいとか知るか!そんなんで浮気するようなやつのために、俺は歩を諦めたんとちゃうぞ!」
そっから取っ組み合いの大喧嘩になって、本棚やら机の上のものが部屋中に飛び散る
物音を聞きつけたオカンが階段を上がってきて
「あんたら!!なにやってんの?!!!!」
扉を開けて怒鳴り散らかす
散らかった部屋を見渡して
「高校生にもなって何をそんな喧嘩することがあるんや!ほんま…誰に似たんか血の気の多い…」
呆れたように言う
「…侑が浮気して歩と別れた」
俺が言うとオカンは凄い形相で部屋に入ってきて、侑をゲンコツで殴る
「はぁぁ?!何さらしとんじゃこのバカ息子は!!!!!さっさと歩ちゃんち行って謝ってこんかい!このバカタレが!!」
えええええ
確実に血の気多いのオカンの遺伝やん
オカンは信じられんとかどないしよとかブツブツ言いながら階段を降りていった
自分よりヤバイやつおったら逆に冷静になる説で、俺はかなり冷静になった
「おい侑…大丈夫か?」
「あんのババァ…思いっきりどつきよって…」