第8章 それぞれの春高まで
「ええーレベル高い!どれが歩の本命なの?」
従姉妹がニヤニヤしながら言う
「いや、誰もちゃうし」
「えーつまんないーこの子とか小柄だけど、整った顔してるよね」
従姉妹は夜久さんを拡大する
「そやなぁ、しかも夜久さんは性格もだいぶ男前やし」
「え、ちょっと待って…何この2人?!姉弟?!」
灰羽姉弟を指差して従姉妹が興奮する
「そやけど…」
「え、ハーフだよね?」
「うん、ロシア人の」
「連絡先教えて」
「急に!なんなん?姉ちゃんはリエーフ君みたいなんがタイプなん?私と同いやからだいぶ歳下やけど…」
「違う違う!3月にヘアメイクのコンテストがあって、モデルを探してたんだけどさ…男女ペアとなると中々いなくって」
「なるほど」
「最悪歩に頼むつもりでいたけど、私今この2人を見てピピーンっと来ちゃったのね、だからお願い!この姉弟紹介して!」
「うんまぁ…言うだけなら言ってあげるけど」
「本当?!ありがとう!私ね、このコンテストに賭けてるんだ」
姉ちゃんは充実感に満ちた目をして、仕事の楽しさを語り始めた
その後も私たちは新幹線の中で、いろいろな話をして盛り上がり、あっという間に新神戸駅に到着する
「歩は地元だから友達と会ったりする予定あるんでしょ?」
「あ、うん。大晦日に、元いた高校のバレー部のメンバーで鍋パしようって」
「またバレー部!ほんと歩の青春はバレー一色だね」
「うん」
心底そう思う
私はバレーとバレー部のみんなとマネージャーの仕事が大好きで、ずっとこうして過ごしてたいって思う
でもいざ社会に出て、自分の好きなことを仕事にしてる従姉妹を見ると、自分もいつかは大人になるという現実を突きつけられる
スガさんにも言われた
3年間はあっという間に過ぎると…
好きなことを見つけて仕事してほしいって
私は今以上に夢中になれる何かを見つけて、それを一生の仕事とすることが出来るのかって、今は全然自信がない
3年生は間もなく新しい進路に進む
バレー続ける人もそうでない人も…
時間は止まってはくれへん
私たちは変わっていく
首をブンブンと振って、センチメンタルな思考を追いやる
私はスマホを取り出すと、帰省したっていう連絡を治に送った