第2章 合宿
そこに翔陽とやっちゃんが通りかかる
「日向ならツッキーに何て声かける?」
「んー…なんも。バレーうまいのか下手か、どっちがカッコいいかなんて、アイツも分かってるだろ。逆に山口は?
山口ならどう声かける?」
翔陽はたまにゾクっとするほど核心をついてくる
「俺、ちょっと行ってくる!」
山口くんが走り出す
「ちょ!山口くん!待って!」
私も後を追いかける
「ヅッッッッギィィィィーーー!」
山口くんが叫びながら走る
ツッキーが振り返る
私は少し離れたところで立ち止まる
何か話してるけどよく聞こえない
「最近のツッキーはカッコ悪いよ!!」
そう言って山口くんがツッキーに掴みかかる
止めにはいった方がいいかな
いや、まだ
ツッキーが何か話してるけど聞こえない
「プライド以外なにがいるんだ!!!」
山口くんが叫びながらツッキーの胸ぐらを掴む
さすがに止めた方が…
一歩踏み出す
いや、大丈夫?
しばらく間があって
山口くんは踵を返しこちらに歩いてくる
「じゃ、あとはよろしく」
すれ違い様にそう言って、来た道を戻っていった
「え」
これは私も立ち去った方が…
「立ち聞き」
「いや、ごめん。そんなつもりは…」
「はぁ…カッコ悪いとこ見られた」
「そんなことない!」
山口くん並みの大声に自分でもビックリした
「ツッキーはいつも、やりたいのにやらない理由を探してるように見える。強くなりたい、日向に勝ちたい、全国行きたい、もっと素直に心のままに動いていいと思う」
「はぁ…じゃあそうするよ」
そう言ってツッキーが近づいてくる
顔が近づく
…ふに
ふに?
「!!!」
「歩が心のままに動けって言ったんデショ?
キスしたいからキスした」
「ちょ、な
「そう言えば…貸してくれた本、読んだ
僕も行くから、子午山」
「…あ、うん」
「だから…
ちゃんと見てて」
そう言ってツッキーは第三体育館の方に歩いて行った
え?
今何が起きたん
誰にも見られてないやんな
第一体育館の前を通る
まだ翔陽と影山くんが練習してる姿が視界に入り、勝手に気まずい気持ちになる
今日はもうお風呂入って寝よう