第8章 それぞれの春高まで
「…今はあくタイプを倒す方法だけ考えんと!」
「いや歩ちゃん、もうさっきから何言ってんの?!」
伊達工に着くとコガネが気付いて走ってくる
「日向!ツッキー!歩!」
「コガネ〜!!」
ガシッ
コガネとハイタッチした手を後ろから掴まれる
「よう、久しぶりだな」
振り返ると二口さん
「あ、二口さん!こないだ電話したばっかりじゃないですか」
「会うのが久しぶりだっつってんの」
「まぁ確かに」
「俺らもハイタッチでもしとく?」
する気もないくせに二口さんは両手を上に上げる
「いや、する気ないでしょ?」
「当たり前だろ、すんならもっと他のコトしてくれよ」
他のことって何?と思っていると
「え?!なに?!二口さん、歩と電話とかする仲だったんですか?!」
驚いたコガネが会話に割って入り、二口さんと私の顔を交互に見る
「あ?お前誰でも彼でも構わず、呼び捨てで呼ばれてんじゃねーよ」
そう言って不機嫌になった二口さんに、パーカーのフードを乱暴に被せられる
「ちょっ、なにすっ!二口さんも呼び捨てで呼んでるじゃないですか」
「俺はいーんだよ」
と言って子供みたいにベーっと舌を出して、自分たちのベンチに向かいながら
「お望み通り叩きのめしてやるから覚悟しとけ」
そう吐き捨てられる
「はぁ?意味わからんし…腹立つわぁ」
被せられたフードをゆっくり脱ぎながら呟く
「いや…今のは、好きなんじゃないの?歩ちゃんのこと」
やっちゃんがおかしなことを言ってる
二口さんが私を好き?
それはちょっと思い当たる節がない
「ないわ、あの人私のこと、かくとうタイプとか言ってくるし」
「だからさっきから、そのタイプってなんなの」
試合が始まる
試合外での二口さんは口悪いしすぐ煽ってくるけど、バレーしてる時はカッコいい
二口さんがっていうより、青根さんとコガネと三枚揃ったブロックはまさに鉄壁!って感じでゾクっとする
そういえば私はIHん時おらんかったから、伊達工との試合見るの初めてやけど、ブロックの圧がすごい
それにブロックだけじゃない
二口さんはタッパあるし、テクニカルでフェイントも上手い
伊達に伊達工のキャプテンやってないってか…