第8章 それぞれの春高まで
「今からする話…誰にもしたことないねんけど…」
「…月島にもか?」
「うん」
「聞かせてくれ」
月島も知らない橘さんの話…
「私な、中学ン時イジメられててん」
「へ?」
驚いて変なリアクションになる
明るくて人気者の橘さんがイジメ?
「…小さい頃から侑と、侑は双子で治って兄弟がおるんやけど、それとずっと一緒にいたから、遊びも男の子の遊びばっかしてて。あんまり女の子の友達がおらんかってん」
「そうなのか」
「で、男友達といる方が楽で、ずっとそうしてたし気にしてなかったんやけど、中学に入ってから周りの目がなんかちゃうって気付いた」
橘さんは歩き始めて、俺も歩幅を合わせて隣を歩く
「宮兄弟は一個上で、人気あったからそれといつも一緒にいる私は、2年の先輩からも同級生からもあることないこと色々言われた。尻軽とか色目使って取り入ってるとか、オモロいので言うたら整形しとるとかも噂あったな」
そう言って笑う彼女の目は全く笑ってなかった
「バレー部のマネージャーやったから、自ずとバレー部の同級生の男子も友達になるやん?こんな感じで…」
そう言って橘さんは自分と俺を交互に指差す
「中学生ってモロ思春期やからさ、男子って女子の言うこと素直に聞かへんかったりするやん?で、体育祭の練習やったかな?なんかそんな時に真面目に練習せん男子を、何人かの女子が注意したんやけど、全く聞かへんくて。私はそん時、良かれと思ってちゃんと練習するように言ったんよ、そしたら…クラスの女の子に、男子は何で歩ちゃんの言うことは聞くの?男好きやから色目使ってるみたいなこと言われてさ…唖然としたわ、感謝されるどころか攻撃されたから」
自転車置き場に着く
彼女は自分の自転車の荷台に腰を下ろす
「私も中学生でガキやったから、意地になって何も言い返さへんかった。男好きも色目使ってるも何も否定せんかった。分かってくれてる人だけが分かってくれてたらいいって開き直って、部活以外の人と関わることをやめた。移動教室も給食もずっと1人やったわ」
そんな…
想像もつかない
学校の中でも外でも人に囲まれて、いつも笑ってる橘さんが…