第2章 合宿
ー歩side
前回の東京合宿から、みんなの様子が変わった
新しい武器を手に入れようと日々遅くまで練習をしていた
やっちゃんと交代で影山くんにボール出しを頼まれた
自分だけを頼ってもらえなかったのは少しショックやけど
影山くんの目にはバレーしか写ってない
それでいい
ポーンと山形に高いボールを上げる
そこから並べたペットボトルに落ちるようにトスを上げる
何度も
何度も
「そろそろ終わろっか」
「ああ、わりぃ」
「ありがとうね、影山くん」
「何が?」
「翔陽がやりたいこと、どうやったら実現できるか考えてあげてくれたんやろ?」
「いや…そんなことねぇけど」
影山くんは照れたように下を向く
「影山くんは優しいな、口では自分が正しいってお前の意思なんかいらんって言ってたけど、こうして翔陽のために遅くまで練習してる。ええ相棒やな」
「べ、べつに日向のためじゃねぇし」
「チーム全体のためでもあるやん、ほんで多分翔陽は影山くんの期待に応えるはずやで。行こうな、全国」
「おう」
影山くんが私を真っ直ぐ見つめて握り拳を差し出した
私は自分の拳を影山くんの拳にコツンと合わせた
ツッキーは自主練してる様子がない
こないだ教室でえらそうに言ってしまったし
それからなんか気まずい…
でもこのままではダメや
夏休みに入る前日
ツッキーの机の上に貸すと約束した水滸伝を積み上げた
ー合宿当日
「お願いしまーす!」
音駒ベンチで挨拶する
「ねあいしゃーす!!」
今回の合宿は長丁場
選手も変わろうとしてる
私も出来ることを精一杯やる
1試合目早速、音駒VS烏野で始まった
試合内容は、みんながみんな新しいことをしようと張り切って、盛大に空回ってた
「はっはっは」
猫又監督が笑う
「いいね、進化しようとしてる」
「全然噛み合ってませんけどね、でも…
絶対この合宿中にモノになるはずです」
「そうあってほしいね。ただ…1人気になる子がいるけど」
「監督…何でもお見通しですね」
ー2日目
「歩ちゃん」
「黒尾さん、おはようございます」
「ちょっとおたくのメガネくん機嫌損ねちゃったかも」
「メガネ…ツッキー?」
「うん、昨日自主練付き合わせたんだけど」