第2章 合宿
ー月島side
この前合宿から戻ってから日向と影山が取っ組み合いの喧嘩をしたって聞いた。それからなんか空気がおかしい。
それでも何か別々に練習してるみたいだけど
みんなアツくて嫌になる
教室につくと、歩が文庫本を読んでいる
「ねぇ」
「あ、ツッキーおはよ」
「最近日向はどこで練習してんの?」
「んー…子午山?」
「なにそれ?」
「今読んでるこの本に出てくるんよ、水滸伝。読んだことない?」
「ない」
「問題起こしたやつとか伸び悩んだやつが、この山で修行してめちゃくちゃパワーアップして帰ってくるみたいなとこ」
「なにそれ」
「ドラゴンボールで言うところの界王様のとこ的な?だから、翔陽も多分めちゃくちゃパワーアップして帰ってくると思う」
「そ、じゃあ読み終わったらそれ貸してよ」
「いいけど、こんなん読んだらツッキーも子午山行きたくなるで」
「なんないし」
「そういや、他のみんなもなんか新しいことしようと思って、練習してるし、影山くんも今日から秘密の特訓やで」
歩の方から影山の名前が出るだけでイラっとする
「へぇ」
「ツッキーはせーへんの?」
「面倒くさい」
「ツッキーさぁ…アツいのカッコ悪いとか思ってる?私からしたら体格にも才能にも恵まれてんのに、自分の限界決めて諦める方がカッコ悪いと思う」
「熱血マネージャーだね」
「だって全国行くんやったら、このままじゃあかんって、ほんまは分かってるやろ?」
ーどうせ、僕なんか日向みたいにも影山みたいにもなれないのに
どうしてそんなに必死にならなきゃいけないの
たかが部活
喉元まで出かかった言葉を飲み込んだ
それから気まずくなって夏休みに入るまで
歩と、ほとんど会話をしなかった
そんなモヤモヤした気持ちのまま合宿に向かう
合宿所に行けば歩はほとんど音駒にいる
話す機会はあまりないかもしれない
「なんか、日向と影山ほとんど話してないよね」
隣の山口が話しかけてくる
「そう」
「でも…ツッキーと橘さんも、全然話してないね?なんかあった?」
「べつに」