第8章 それぞれの春高まで
ー影山side
日向と外で練習して、汗だくになったTシャツを着替えて、体育館に向かった
中に入ろうとしたところで、こちらに走ってくる橘さんが視界に入る
なんかすごい形相で…
え?!
ドガシャーーーーン!!
「っ痛ぇ」
俺は何故か出会い頭にラリアットをかまされて体育館の外に倒れこんだ
「うわ!めっちゃごめん!ほんまごめん!」
俺の上に覆い被さる橘さんが平謝りする
「…何だよ」
「シーッ」
彼女は口元に人差し指を当てて、そのままその指で体育館の中を指さす
扉の間から顔だけを出して見てみると、山口と谷地さんがネットの近くにいるのが見えた
「何だ、山口と谷地さんじゃねぇか」
「あの2人、私らがおらん間に何かいい感じなってるらしいで」
そう言って振り向いた彼女がイタズラっぽく笑う
数日会ってなかっただけで、なんか無駄にドキドキする
それともこれは合宿で宮さんとの話を聞いたからか
橘さんが宮さんと付き合ってたって言う…
付き合うってそもそもなんだ?
「…いい感じ?とは」
「え、お互い好きなんかな〜って感じ?」
「そうなのか?!」
「…相変わらず影山くんの脳内は100パー、バレーボールやな」
そう言って橘さんが笑う
そんなことない
今は…100パー、バレーで形成された俺の脳みその中心で橘さんのことを考えてる
「なぁ…」
「ん?」
「ちょっと聞きてぇことがあるんだけど」
「私に?」
「おう」
何て言えばいい
宮さんと付き合ってたのか?ってストレートに聞くか
聞いたところでどうする
「その…ユース合宿で稲荷…
「影山〜!歩ちゃん、そんなとこで何やってんだよ〜」
後ろからやってきた菅原さんに肩を掴まれる
何か微妙に力強くないか?気のせい?
「2人とも久しぶり〜元気だったか?」
「そんな久しぶりじゃないでしょ」
橘さんが菅原さんに向かって答える
そして次々と体育館にメンバーが集まり、朝練が始まった
橘さんに聞きたかったこと
宮さんと付き合ってたのも気になるけど
それ以上に俺が言われた
おりこうさん
その意味
宮さんを知る彼女なら真意が分かるだろうか