第7章 選抜合宿
ー宮侑side
今日の練習で色んなポジション出来るようにポジションシャッフルした
飛雄くんは俺のセットアップでイキイキしながらスパイク打っとった
うまいセッターにトスあげてもろたスパイカーは、上手くなったと錯覚するんやで
「どやった?スパイカー」
「宮さんのトスすげぇ打ちやすいっス」
「せやろ〜俺のセットで打てへんやつはただのポンコツや。
…飛雄君はセッターよりスパイカーのが向いてるんちゃう?」
「なんでですか?」
「セッターやってる時、小難しい顔しとったけど、レフトやってんの楽しそうやったで」
「…そうですか、でも俺はセッターです」
まぁ…せやろな
でもなんか腹立つわ
『セッターってカッコええな!侑に合うてるわ!』
何でか、歩が俺にそう言うた言葉が脳裏によぎった
俺らがバレー始めてしばらくした時
そん時の俺はまだセッターは地味でスパイカーがかっこええと思っとった
でもうまいセッターの人に出会って、セッターこそスパイカーを操る司令塔なんやって気づいて俺はセッター志望になった
でもまだガキやったから、周りのみんなはそのカッコ良さに全然気づきよらへんかった
ある日の練習試合で、俺があげたええ感じのトスを治が決めよった
「ナイスキー治ー!」
「治君カッコいいーっ」
そうやって周りが言う中で、歩だけは違った
試合終わった後に俺んとこに来て
「最終セット凄かったな」
歩が興奮気味に言う
「おお、治のスパイクやろ?みんな言うとったな」
内心複雑な気持ちで返事する
「ちゃう、あれは侑のセットが完璧やったからやで」
「え?」
「セッターってカッコええな!侑に合うてるわ!」
そう言って笑った歩の顔は今でも忘れられへん
歩は小さい頃から可愛らしかったから、周りに男のガキがよう寄ってきて、それをいつも治と追い払ってた
でもそれは兄的な気持ちでやってたつもりやったけど、その日明確に気づいた
俺は歩が好きなんやって
中学入っていよいよ美人になった歩を誰にも取られたくなくて、中3の時に気持ちを伝えた
歩も同じ気持ちやって知った時は死ぬほど嬉しかった
歩の目に映るセッターは俺1人で充分や