第2章 合宿
学校についた頃には辺りは真っ暗
それなのに翔陽と影山くんは体育館に入り、やっちゃんがそれを追いかける
「今まで練習してたのに、まだやるのかよ。歩ちゃん、帰ろ」
スガさんに声をかけられる
「あ、はい。あの…今日の午前中の試合後何かあったんですか?」
「あー、なんか日向がね変人速攻の時、目瞑るのやめて、自分の意思でコースの打ち分けがしたいって言い出して。影山は日向が自分の意思を持つことで、ズレが生じるから余計なこと考えるなって感じでさ…」
両方の言い分が分かる
「やっぱりわたし、見てきます」
体育館に向かうと、やっちゃんが飛び出してきた
「誰か!歩ちゃん!先輩よんで!2人が喧嘩して」
「え?」
近くにいた田中さんに仲裁に入ってもらい、なんとかその場は収まったけど、今は2人とも冷静になる時間が必要
「翔陽のこと頼んだで」
私が絆創膏を渡しながら言うと、やっちゃんはコクリと頷いた
影山くんは水道で顔を洗うと、私が差し出したタオルで水滴を拭った
「動かんといて」
少し背伸びして影山くんの頬に絆創膏を貼る
「他は?」
「…大丈夫」
「帰ろか」
私が前を歩き、その後ろを影山くんがトボトボ歩いてくる
自転車置き場までついてくるから一緒に帰るんやろうけど、さすがに2人乗りする雰囲気ではない
私は自転車を押しながら歩き出す
「…悪かったな」
「ううん…」
「それにしても…俺が正しいこと言ってんのに、何で日向はあんなに食い下がってくるんだよ」
独り言のようにブツブツ言ってる
「橘さん…何で今日は何も言わねーんだ?」
「え?」
「いつもだったら正しいって思うこと、なんかこうスパーンって言ってくれるだろ」
「うーん…人の気持ちにどっちが正しいなんて決められへんからかな」
「そうか…日向が言うことも間違いじゃないって思うか?」
「成長したいって、みんなの役に立ちたいって思う気持ちが間違いなわけないやん。でも…それは影山くんやって一緒やろ?チームのためには今のままがいいって思う気持ちも間違ってない。だから難しいな」
「おう」
「翔陽がやりたいこと、できる方法はないんかな?私には技術的なことは分からんし、誰か相談出来る人とかおらんの?」
「…考えてみる」
「うん、ほなまたね」