第7章 選抜合宿
なんだ…そうか…
俺の勘違いだったのか
彼女の口からハッキリ付き合ってないというのを聞いて、内心ホッとした
ホッとした?
どうして?
牛島さんに彼女がいなかったから
…それとも…
ホッとしたのも束の間、勝手に勘違いして女子寮まで押しかけたあげく、彼女を押し倒した記憶が蘇り、赤面する
そんな俺の様子を見て、彼女は眩しいほどの笑顔で
「アハハ…白布さんって牛島さんのこと好きなんですね」
と笑う
「好きって言うと語弊があるけどね…憧れ?崇拝に近いものがあるかも」
「分かりますよ分かりますよ!試合中の神々しさと言ったら、敵チームの私ですら、あまりの空中姿勢の美しさに額に入れて飾りたいぐらいでしたからね」
「うわー!分かってくれる?そうなんだよ、神々しいんだよ」
「だから普通に考えたら、あんなバレーの神が創りたもうた芸術作品が、私なんかと付き合うわけないじゃないですか!ジャパンですよ?畏れ多い〜」
そう言って彼女はありえないというように手をブンブン振って、笑いながら否定するけど、そんなことはない
俺は君だったら牛島さんに相応しい女性だと思ったんだから
絵になる2人を羨ましいとも妬ましいとも形容し難い気持ちで見ていたんだから
「笑ったからか知りませんけど、めっちゃ血流よくなった気がします」
「まぁ温かい飲み物も飲んだしね、そうだ、左手出して」
「左手ですか?はい」
そう言って橘さんは疑いもせず、左手を差し出す
その手を両手でギュッと包み込む
スラッと背の高い子だけど、手はそんなに大きくなくて柔らかで、やっぱり女の子の手をしている
「手の真ん中に手心っていうツボがあって、貧血に効くから」
「そうなんですね!」
「他にもあるけど、ちょっとセクハラになりそうな場所だからやめとく」
「アハハ、セクハラに関しては白布さん、前科一犯ですもんね」
「事故じゃん、ごめんって」
「冗談ですよ」
そう言ってイタズラっぽく笑う彼女
こうして手を握るくらい…
許されますよね、牛島さん