第7章 選抜合宿
試合まで時間あるなら、自分がついててあげればいいのにって気持ちと素直に嬉しい気持ちがないまぜになる
「あの…白布さん、ご迷惑ですよね?私、一人で大丈夫ですよ?」
「ううん、大丈夫」
俺はあの日と同じように少し前を歩き、食堂に向かう
まだ昼食の時間には早く、人気のない食堂の中腹まで進むと、彼女を椅子に座らせる
「本当は寝転がった方がいいだろうけど」
「いえ、大丈夫です」
そう言って椅子に腰掛ける彼女の足下にもう一脚椅子を差し入れる
「足、高くしといた方がいいからね。頭に血液が回ってないと脳貧血になりやすいし」
「白布さん…お医者さんみたいですね」
一応…その進路のつもりで勉強してるからね、と心の中で呟いて立ち上がる
奥のサーバーから暖かいお茶を汲み、端に積んであるブランケットを抱えて彼女の元に戻る
「コーヒーはしばらく控えた方がいいよ、はい」
「ありがとうございます」
俺の手から湯呑みを受け取りながら彼女が答える
「白布さん、めっちゃ白衣似合いそうですね」
「そうかな」
「絶対ナースからモッテモテでしょうね!あ、でも彼女さんいますしね〜」
一人で盛り上がる彼女
「いないよ、彼女なんて」
ボソッと呟くと、彼女が驚いた顔で俺を見る
「え?!だって…あん時」
「橘さんが勝手に勘違いしたんでしょ?その…俺が女子寮の誰かの部屋に夜這いに行ったとか言って」
「えー!違うかったんですか?!待ってください、じゃあ…何で女子寮に?!てか明らかに私の肩をポンてしましたよね?」
「それは…その…牛島さんの彼女がどんな女か確かめようと思って」
「…?え、牛島さん彼女いるんですか?!しかも女子寮に?!」
あれ…
なんか話がこんがらがってる気がするんだけど
牛島さんの彼女は橘さんで、その橘さんを見に行ったつもりなんだけど…
「待って、待って、橘さんが牛島さんの彼女じゃないの?」
「…?え、質問の意味がわかりません」
「え、だから…牛島さんと付き合ってないの?」
「何がどうしたらそうなるんですか?さっきの会話聞いてたでしょ?私のことフルネームで呼びながら、鉄剤とレバー用意しようとする彼氏とかおかしすぎるでしょ」