第7章 選抜合宿
ー白布side
今日は俺たちも例の選抜強化合宿
その練習試合の相手をするらしい
牛島さんと天童さん、瀬見さんたちと体育館へ向かう
練習とは言え、また牛島さんと一緒に試合出来るのも嬉しいし、多分体育館には橘さんもいるんだろう
…て、橘さん?!
向こうから、やや青白い顔をして彼女が歩いてくる
元から色白な子だけど、それにしても今日は顔色が悪い気がする
「おっ、あれれっ軽トラ娘ちゃんじゃないの?!」
彼女を認識した天童さんが話しかける
「天童さん…お疲れ様です」
「どうした橘 歩、顔色が悪いようだが」
うわー牛島さん本当にフルネームで呼んでる
「牛島さん…実は貧血で倒れてしまって、少し休憩させてもらおうかと思って」
「大丈夫か?頭とか打ってないか?」
「あ、はい。ありがとうございます、大丈夫です」
斜め後ろから見る牛島さんと橘さんのカップルは絵になりすぎる
体格が良い牛島さんと、それを見上げるようにする華奢な彼女
控えめに言って、切り取って壁に飾りたい
…でもそれだけじゃないモヤモヤした気持ち
これは何だろう
「貧血か…うちの部員に鉄剤を買いに行かせようか?」
真面目な顔で牛島さんが言う
「いや、大丈夫です!」
「 食物から摂取する方がいいか…レバーを買いに…」
「いや、何も買いに行ってもらわなくて大丈夫です!暖かくして、少し休憩したら治ると思うので」
橘さんは両手を顔の前で振る
「俺の部屋の毛布を使うか?」
「若利くん?!それ自分の寝具の毛布ダヨネ?!」
「ん?そうだが、何かおかしいか?」
「いやおかしいでしょ!多分食堂にブランケット置いてあるからそれ使いなよ」
天童さんがそう言って橘さんの肩をポンと叩く
彼女のために鉄剤やレバーを手配しようとしたり、自分の毛布で包んであげようとしたりするなんて、2人の間に付け入る隙など…
「白布」
思考を遮るように牛島さんに名前を呼ばれる
「はい」
「試合までまだ時間あるから、お前 橘 歩についててやれ」
「え、あ、はい」
俺の返事を聞くと牛島さんは彼女に
「まぁ、あまり無理するな」
そう声をかけて体育館の方に歩いていった