第7章 選抜合宿
ー歩side
3日目の朝
「…翔陽に何があったん?」
「昨日の夜も延々と球拾いやってたからな」
つとむんが答えてくれる
1人だけ試合中みたいにコートの端にいて、ボールだけやなくて選手の助走とかセットアップのモーションとか見てから動いてる気がする
翔陽は中学ん時、チームメイトに恵まれんかったって聞いたことがある
だからボールに触れることが嬉しくてずっとずっとボールだけを追いかけてた
でも今の翔陽は違う
コートの中の情報をしっかり読み取ってる
ここに押しかけてきて何か得るものがあって、ほんまによかった
今日は私も夜練とことん付き合おう!
チームメイトが
ヒナガラスが進化する瞬間を見逃したくない
1日の練習が終わって、携帯を見るとやっちゃんから着信があったのを見て慌ててかけ直す
プルルル
「もしもし、やっちゃん?お疲れ」
『歩ちゃーーん!お疲れ様っ!あのねっ!今日常波と練習試合したんだ』
「へー、そうなん?どやった?」
『ボッコボコだったよー』
「まぁうちは全国行き決めたチームやか…
『ううん!こっちがボコボコにされちゃった』
「えええ!」
『今ねサーブ強化週間なんだけどね、田中さんのカッコいいジャンプサーブとか山口くんのジャンフロとか、狙ったとこに決めるっていうのを意識してやってたら、全然入んなくてね』
「そっかそっかー、でもみんな新しいことやろうって頑張ってるんやな〜そや、翔陽もすごいで!球拾いマスター」
『球拾いマスター?!それは凄さがよく分かんないけど、なんかさ…こうして離れて練習するの初めてだね』
「1年がみんなバラバラやもんな、烏野に山口くんとやっちゃん、ユースに影山くん、白鳥沢に翔陽とツッキーと私」
『なんかすごく楽しみ、次会った時みんなどんな風に成長してるんだろうなって』
「そやな、私も強豪校でマネージャースキル磨いて帰るから」
『えええ!歩ちゃんも?!じゃあ私も頑張るねっ』
「うん!留守は頼んだよ」
そう言って電話を切って、アリーナに戻る
…と
「おい…チョット付き合ってくんない?」
世にも珍しい光景が眼前で繰り広げられている
ツッキーが翔陽に付き合ってくれ…
えっと…これは一体
声をかけられた翔陽も二度見する