第7章 選抜合宿
「で、軽トラ娘ちゃんはお目付役ってわけ?」
天童さんが私の方を向く
「まぁ、そんな感じですね」
「で、そのノート何?」
ジャージのポケットからはみ出るノートを指差される
「あ、えっとこれは…鷲匠先生に指導いただく機会なんて中々ないんで、メモしてるんです」
「ふーん」
天童さんと話していると、モップを持った翔陽が体育倉庫から出てくる
その目はさっきまでと全然違う
何か吹っ切れた顔をしてる
その顔を見た天童さんが
「…気持ち悪いね」
と呟くと、ウシワカさんも
「ああ…嫌だ」
と答える
「本当…烏野気持ち悪い、マネージャーまでギラギラしちゃってさ」
たまに翔陽をチラッと見ると、コート内を凝視している
ごく稀に見せるゾクリとするような表情
球拾いの動きもさっきまでとは段違い
その日の練習が終わり、片付けを始める
「呼ばれてねぇヤツには飯も寝床もねぇからな」
鷲匠先生が翔陽に言う
そっか、今日から他の合宿メンバーは泊まりか
「橘さん」
「はい」
「君の部屋はあるぞ」
「え?そんな、ご迷惑なんで」
「こんな時間に女生徒を放り出せるわけないだろ」
別に翔陽と帰り一緒やしなぁ…と思ったけど、お言葉に甘えさせていただく
「ウチは寮生も多いから、空いてる女子寮の部屋用意しておいた」
「ありがとうございます」
私が礼を言うと、鷲匠先生はヒラヒラと手を振りながら、体育館を後にした
「そんならチビガラスにも用意してやればいいのに、どう考えたって場所とらないでしょ、あのチビ」
「日向翔陽はないチャンスを創りにきた、それが上手くいったのかはさておき、「選ばれない」ということが奴の現状であり、それは今後もあり得ることだ」
「なるほどねー」
天童さんとウシワカさん、翔陽のことよく見てくれてるなぁ
「橘 歩」
「はいっ」
「女子寮に案内しよう」
「あ、はい…ありがとうございます」