第7章 選抜合宿
「はは、アイツそんなこと言われたの?」
「何でちょっと嬉しそうなん!ほんま意地悪いぞ」
「でもまぁ…日向が凹んだままなんてこと絶対ないでしょ」
「そやと思うけど」
「あーやだやだ、アイツ見てると何かやんなきゃいけない気がするんだよね」
面倒臭そうに溜息をつくと、歩がクスッと笑う
「なに?」
「いや、ツッキー変わったなぁって思って」
「なにが?」
「前まで、みんながどんなに必死でも1人だけ冷めてたくせに、翔陽見てたら何かせなあかんって思うとか…」
「うるさい」
電車の扉にもたれながら僕を見上げて話す歩
僕らは周りからどう見えてるんだろう
「てかめっちゃお腹空いた」
「僕も、何か食べて帰る?」
「烏養コーチに家帰ってちゃんとした飯を食え!って言われるで」
「確かに…じゃあクレープだけ」
「ツッキーまじで甘党やな〜でもクレープ分かる!ドンピシャ」
「前にさぁ、神戸のスイーツバイキングの話してたのちゃんと覚えてる?」
「覚えてるけど」
「本当に?ちゃんと連れてってよね」
「…うん」
少し恥ずかしそうに俯いて応える歩
「そう言えば、年末兵庫帰るんでしょ?」
「あ、うん。親の仕事もあるから、数日やと思うけど」
「じゃあ、クリスマスはコッチにいるんだよね?」
「うん、てか部活もあるしな」
「じゃなくて…クリスマス、どっか行きたいとこないの?」
「ふぇ?!?!」
「…なんて声出してんのさ」
「え…それはつまり、あなたと私2人で?」
「なに?やなの?」
「いえ…やじゃないです」
「何で敬語なの?」
「だって…急に2人でクリスマスとか言うから…」
頬を紅く染めて俯く歩の姿に満足する
「さ、次で降りるよ。クレープ買って帰ろ、遅くなったし送ってく」
「あ、うん。ありがとう」
「やけに素直じゃん」
それから僕らは駅前でクレープを買って、歩の家まで食べながら帰った
「じゃあまた明日」
「待って」
「え?」
歩の口元に手を伸ばす
「…クリームついてる」
口元についてたクリームを拭った指をペロッと舐めると、歩は真っ赤な顔をして硬直する
「じゃあね、まぁ考えといてよ。クリスマスどこ行きたいか」