第6章 日常
どーゆーことやねん!って罵声が聞こえて来るかなって予測してたけど、歩はただ寂しそうな顔をして
「そっか」
って言って、足早に立ち去っていった
「ちょ、歩」
呼び止めたけど彼女は振り返らない
「ツッキー…ごめん…俺」
慌てて山口が謝る
「…何も言ってなかった僕が悪い」
「橘さんのこと、本気なんだね」
「…うん」
「先輩とは?」
「何もない、いきなりキスはされたけど」
「そうだったんだ…俺から橘さんに言おうか?」
「いや、自分で言う」
ー放課後
身長の計測のために保健室に入ると、清水さんと歩がいた
歩は僕と目を合わさず、背を向けて何か記録している
清水さんが背伸びして身長を測ろうとするけど、身長差がありすぎてうまくいかない
「歩ちゃん変わって、他のみんなはギリいけたけど、月島は届かない」
清水さんに言われ、歩は渋々僕の隣に立って背伸びしてバーを降ろす
「ひゃくきゅう…190.1?!?!?!?!やっば!ツッキー190超えやで!!潔子さん190.1です!!メモってください!」
そう言って歩は僕の背中をバンバン叩きながら、途中で我にかえる
「あ」
「あ、って」
「じゃれたらアカンって思ってたのに!!」
「何でよ」
「はいはい、何があったか知らないけど夫婦喧嘩はその辺にして次最高到達点計りに行くから、早く仲直りして体育館集合ね」
清水さんがそう言って保健室を出る
「ちょ!潔子さんまで夫婦喧嘩て!」
ピシャッと扉が閉じる
「歩…朝のことだけど」
「…先輩と付き合うてるんやろ?」
「付き合ってないし」
「え、そうなん?」
「…僕の気持ちがそんなに簡単に変わると思った?心外なんだけど」
「ごめん」
「謝んないでよ、いつもの圧はどうしたのさ」
「…ツッキーの目からどう見えてるか分からんけど…私、めっちゃ怖いんよ。自信ないねん」
ポツリポツリと話す様子は、いつもの歩じゃないみたい
「何が怖いの?」
「…信じて、裏切られんの」
初めて聞いた
歩の過去に何があったの
いつも明るくて元気な君にこんな表情をさせたのは
誰?