第6章 日常
ー歩side
帰りの新幹線
流れる景色をボーッと見る
景色って言っても東北に向かう車窓から見えるのは、ほぼ暗闇やけど…今はそれでよかった
木兎さんや赤葦さんが私なんかに好意を持ってくれてたなんて全然気付きもせんかった
滅多に会わへんし、どこでそうなったか分からんけど
お兄ちゃんみたいで楽しい木兎さん
冷静で物静かで気配りの出来る赤葦さん
いつもの2人からは想像も出来ひんような、男の子の顔やった…
その顔を私に見せてくれたことは嬉しくもあるし、人としても選手としてもあんなに素敵な人たちに、好意を持たれることはありがたいけど…
一気に訪れすぎやろ
今の機会逃したら一生誰からも好意持たれへんかもって思うぐらいの、なんていうか…
盆と正月一緒に来たみたいな?
いや、それ言い出したら昨日の研磨さんも様子おかしかったし
スガさんのこととかツッキーのこともあるし盆と正月どころか誕生日とクリスマスも来たぐらいやん
でもツッキーは正直どうなんやろ
アプローチしても、すぐに返事せーへん私に嫌気がさして違う女の人のこと好きになったかもしれん
いや、すぐ返事すんなゆーたん向こうやけど
でもこのままではアカンよな
ちゃんとツッキーに自分も同じ気持ちやって伝えたい
もう今は私のことを好きやなかったとしても…
そんで、スガさんにはちゃんと言おう
好きな人がいるから気持ちには応えられませんって…
でも全国行く前の今そんなんわざわざ言う必要ある?
それはさすがにあかんよな
ほんで年末には帰省もあるし…
車窓から暗闇を見つめ、モヤモヤと色々なことを考えながら東京を後にした
ー数日後
いつものように翔陽と登校し、自転車置き場から校舎に向かう
「歩!音駒と梟谷の試合どーだったんだよ!詳細教えろよ!!研磨は?!どうだった?楽しそうだった?」
「んー楽しそう?やったかは分からんけど、怖かった」
「怖かった?」
「何ていうか、相手チームの攻撃パターンを飄々としながら分析して、打つトコなくされてく感じ?なんかさ、気持ちよく打ってたら実は打たされてて、そこに夜久さんがいて〜」
「うわー、分かるわ〜でもまぁ梟谷との試合でも、アイツ楽しそうじゃなかったのか」
翔陽がフフンと笑う