第6章 日常
「…うん…でも、あなたみたいにバレーのことよく知ってる彼女だったら、優も嬉しいんだろうな」
「そんなことないんちゃいますか?」
「え?」
「自分が興味ないことやのに、知りたいと思って貰えるのって男性は嬉しいと思いますよ」
「…そ、そうかな?」
彼女は何かを決意したような顔になる
「なんか気持ち落ち着いた…ありがとうね」
「いえ、私は何も」
「良かったら名前聞いてもいい?」
「歩です、宮城県の烏野高校の1年生です」
「え?!宮城?関西の子かと…」
「出身は関西です」
「そうなんだ、私は美華っていうの。歩ちゃんは宮城県の高校でバレー部のマネージャーしてるの?」
「そうです」
「そっか、また会えたらいいね、じゃあ私行くね!」
美華さんはニコリと笑って踵を返し、パタパタと走り去っていった
大丈夫、きっと仲直りできる
私も梟谷コートへと急ぐ
得点ボードを見上げると
相手チームのマッチポイント
高校ナンバーワンスパイカーの呼び声高い
佐久早さんのスパイクがブロックを吹き飛ばし、試合終了
あれが…全国
ゴクリと唾を飲む
「歩ちゃん、先に飛び出してったのに遅かったね」
黒尾さんに声をかけられて我に帰る
「あ、黒尾さん。途中でちょっと戸美のキャプテンの彼女となんやかんやしてまして」
「なんやかんやて何?!戸美のキャプテンって…大将くんの彼女?確か美華ちゃんだっけか?いや…フラれたとかいう噂なんだけど」
「いや〜全然、美華さんはベタ惚れですよ」
「ムカつく!あいつホントムカつく!試合に勝って勝負に負けた気分だよ」
「あはは、でも確かに美華さん可愛かったな〜アレは戸美のキャプテン自慢の彼女ですね」
「あーあ、歩ちゃんが彼女になってくれたら、俺も自慢すんのにな〜」
「何言うてるんですか」
軽口を叩きながらコートを見る
「覚えとけよ佐久早!今度…
「木兎さん、終盤に3連続サーブミスは頂けません、修正していきましょう」
木兎さんに被せ気味で赤葦さんが淡々と言う
「赤葦タイミング!タイミング大事!」
木兎さんが床に倒れ込む
「…赤葦と歩って、ちょっと似てるよな」
「どこがですか?」
「圧が凄いとことか、相手が誰でもブレない感じとか」