第6章 日常
最後は研磨さんからのセットアップを山本さんが決める
戸美の主将がギャラリーに突っ込んでまで追いかけたボールはフロアに落ち、試合終了
向こうも勝つために必死なんは一緒
悔しそうに佇む相手チームを見て胸がキュッとなる
「勝っ…た」
「ウェーーイ!」
夜久さんとハイタッチする
コート内ではリエーフ君と芝山くんが叫びながらハイタッチしてる
夜久さんと黒尾さんを欠いた極限状態で、2人は飛躍的に成長し、チームワークがハマる瞬間に出会ったんやろう
私と夜久さんの元にみんなが駆け寄る
みんなに労いの言葉をかけて、あとはチームメイトだけにした方がいい
私はまだやってるか分からんけど、梟谷のコートに向かった
ギャラリーから出た混雑した部分で誰かにドンッとぶつかられる
「わっ、ごめんなさい」
慌てて謝る女の人、同年代くらいかな?前髪パッツンで可愛い人
「いえ、こっちこそ」
「音…駒のマネージャーの方ですか?」
赤いジャージを羽織った私の姿を見て、その人が言う
「いや…正確には違うんですけど、お姉さんも音駒の関係者ですか?」
「いいえ、私は戸美高校の3年で…その」
お姉さんは何か言いたそうな気まずそうな微妙な表情をしてる
「どうかしました?」
「…キャプテンの彼女なんです」
「はっ!ヘビ男の!あ、失礼しました!人の彼氏になんてことを…じゃあ戸美ベンチの方に案内しましょか?」
あのヘビ男やるなぁ
こんな可愛らしい彼女が試合見にきてるとか…
「いや…待って、ちょっと喧嘩中で私が来てることも知らないと思う」
「え?そうなんですか」
「うん…あのね、優はすごいバレーの練習に熱心で、いつもバレーのことばっか考えてて、寂しかったのかな。優はバレーばっかでつまんないって言っちゃって…」
私はバレーやってる人としか付き合ったことないけど、自分もバレーに関わってるからつまんないとは思ったことない
でももし好きになった人が自分の興味ないことに一生懸命で自分が蔑ろにされてるって思ったら、やっぱり寂しいって思うんちゃうかな
だからこの彼女さんの気持ちは間違ってないと思う
「…で、今日試合見てどうでしたか?」
「…カッコ良かった」
「ですよね、あんな姿見せられたら惚れ直すしかないですよね」