第6章 日常
袖を通すとブカブカやし、黒尾さんの匂いするし恥ずかしい
「なんか…思ったよりイイな」
「そうですか?」
研磨さんの方を向くと、珍しく照れたような表情をしてる
「いいんじゃないの、彼シャツみたいでちょっとエロい」
「研磨、みなまで言うな」
研磨さんにエロいとか言われて動揺する
何で音駒の赤ジャージがエロいんか分からんけど
「もう!何言うてるんですか!はよ、もうみんな行きましたよ!私も2階で…
「歩…下のギャラリーで見なよ」
「そーだそーだ、近くで見てろよ」
2人にそう言われ、アリーナのギャラリー席に入る
ブカブカの音駒の赤ジャージ、私服の上から羽織った怪しい女子高生が1人でギャラリーにいるのは、ものすごいアウェー感やけど…
と、猫又先生と目が合う
ペコっとお礼をすると、ニッコリ笑って手を挙げてくれた
VS戸美
この試合に勝てば音駒も東京代表の3枠に残れる
試合が始まる
なんかコート際で向こうのチームが言うてる
耳を澄ますと、どうもリエーフ君が煽られてる
「11番空振りあるぞ〜」
…確かに
でもそれだけやない
「4番ストレートない」
山本さんまで言われてる
煽りなんて小賢しい真似しよって…
ここが稲荷崎やったら
「お前ら小賢しいコトしやがって、それでも男か!キ○タマついとんか!正々堂々勝負しくされ!」
とか言うてまうとこやけど、東京体育館でキ○タマ発言は絶対あかんことぐらい私でも分かる
なんか嫌な雰囲気やなぁ
試合が始まっても、戸美はやたら礼儀正しくて何というか主審の心証良くしようとしてるのがモロわかり
逆に煽られた音駒はイラついて、相手に食ってかかって心証悪くなってる気がする
現にタッチネットもかなり厳しく取られてる気するし…
リエーフ君、山本さん、挑発に乗らんと落ち着いてほしい
福永さんのスパイク、ええとこ入った
イン
やんな?
え?
アウト?
待って、向こうのキャプテン
今もしかして際どいコースやからってボールが線審の死角なるように出てきたんちゃうん?
ハァ?!
「ゴルァ!ヘビ男ォ!お前キンタ…ハッ!!!」
両手で口を押さえる
挑発に乗らんと落ち着くん私の方やんかぁぁぁ!